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ヴァイオリン音響モデル

ヴァイオリン

弦の変位

駒の側から弓の傾き(7 段)

弓の状態帯はよく鳴る範囲

vb 弓の速さ
00.51
m/s
F 弓圧
024
N
β 駒からの距離
駒0.1250.25
× L
弓の位置
先 0.65元
m

1 / – 小節
表情
テンポ テンポ

%

弓圧 弓圧

%

音量 音量

dB

弾く弦
v_b 弓の速さ

m/s

F 弓圧

N

β 駒からの距離

× L

弓圧の上限 Fmax
弓圧の下限 Fmin
駒から弓まで xb
1 周期の滑りの割合

ビブラート
幅 ビブラートの幅

セント

速さ ビブラートの速さ

Hz

G 線 G 線

セント

D 線 D 線

セント

A 線 A 線

セント

E 線 E 線

セント

G 線の開放 f1
D 線の開放 f1
A 線の開放 f1
E 線の開放 f1

弱音器
個体
空気の共振 A0
胴の曲げ CBR
板の共振 B1−
板の共振 B1+
駒の揺れ
駒の上下
CH1 駒のアドミタンス 10 dB/divCH2 音圧 ÷ 力 10 dB/divX LOG 100 Hz – 10 kHz

部屋
r 聴く位置

m

残響時間 T60(500 Hz)
残響時間 T60(4 kHz)
臨界距離 rc
残響音 ÷ 直接音

音の波形

CH1 音圧 /divH /div

計算結果

弓が触れている弦(いちばん高い弦)

第 1 部分音 f1
振動する長さ L
張力 T
線密度 μ
波の速さ c
特性インピーダンス Z0
駒の力の振幅 Z0vb/β
弦の中ほどの全振幅

動作原理と式

音の流れ

弓で擦られた弦は、弓に付いて一緒に動く「固着」と、弓から外れて戻る「滑り」を周期的に繰り返します。これが Helmholtz の運動です。弦の振動は駒を揺らし、駒が胴を揺らし、胴が空気へ音を出します。

  1. 弓速さ・弓圧・駒からの距離
  2. 摩擦固着と滑り
  3. 弦横振動とねじりのモード
  4. 駒揺れと上下の動き
  5. 胴シグネチャモードと多数のモード
  6. 放射1 m 先の音圧
  7. 残響再生の音だけ

弓と弦の摩擦は、音の標本ごとに解きます。高い音では、1 標本をさらに細かい刻みに分けます。4 本の弦は別々に計算し、駒の上で力を足して胴へ入れます。

弦

弦は、両端で支えた曲げ剛性のある弦として扱います[1]。両端は駒と、押さえた指(開放弦では上駒)です。開放弦の振動する長さは 328 mm です[2]。押さえた音では、音の高さに合わせて短くします。

T
張力
μ
線密度
L
振動する長さ(開放弦で L0)
s
開放弦から押さえた音までの半音の数
EI
曲げ剛性
B
非調和性係数
c
横波の速さ
Z0
特性インピーダンス

曲げ剛性があると、高いモードほど周波数が整数倍より少し高くなります。線密度は、開放弦の第 1 部分音が平均律(A4 = 440 Hz)の音の高さに合うように、張力から求めます。計算結果の第 1 部分音 f1 は、曲げ剛性を除いた値です。

入力の「調弦」で、弦ごとに開放弦の音の高さを平均律からずらせます(±100 セント)。糸巻きを回すのと同じく張力を変え、線密度は変えません。ずらす量を c セントとすると、張力は 2c/600 倍、特性インピーダンスは 2c/1200 倍になり、押さえた音も同じだけずれます。弓で弾いた音は、弓圧が強いほど第 1 部分音より低くなります。この模型で開放弦を弓速 0.3 m/s・β 0.1 で弾くと、弓圧 0.3 N で 3〜5 セント、0.8 N で 6〜22 セント(E 線がいちばん大きい)低くなります。チューナーで合わせるときは、弾くときの弓で鳴らしながら合わせます。

fn=n2LTμ1+Bn2B=π2EITL2L=L02−s/12μ=T+π2EI/L024L02f開放2c=TμZ0=Tμf1=c2L

弦の値

  • 張力と外径: Pickering が測った合成芯の巻線弦(Dominant)の値[3]。E 線は、線密度の合うスチールの単線
  • E 線の曲げ剛性: Galluzzo らの値[4]
  • 巻線の 3 本の曲げ剛性: Desvages の表の弦の半径とヤング率から、芯の半径を弦の半径の半分として求めた値[5]。曲げ剛性は芯で決まるとする
弦開放弦張力外径曲げ剛性(×10−5 N·m²)
E 線E572.56 N0.25 mm4.7
A 線A456.25 N0.676 mm0.8
D 線D443.72 N0.795 mm0.85
G 線G344.57 N0.803 mm0.8

弦の損失

弦が自分で失うエネルギーは、損失係数 ηn で表します。振幅は e−ηnωnt/2 で減ります。ηn は、Woodhouse の式の形[6]に、空気の粘性による損失(Valette)[7]と押さえた指の損失を足したものです。

  • 空気の粘性による損失。d は外径、ηa と ρa は空気の粘性率と密度
  • 低い周波数で増える損失 ηX
  • 張力の側の内部摩擦 ηF と、曲げの側の粘弾性 ηB
  • 押さえた指の損失 η指(開放弦では 0)
ηn=ηa+dπηaρafnμfn+ηXωn+TηF+EIkn2ηBT+EIkn2+η指nkn=nπL

ηF と ηB は、E 線が Galluzzo らの測定[4]、巻線の 3 本が Mansour らのチェロ弦の測定[8]の値です。高い倍音ほど、曲げの損失で早く消えます。

Schoonderwaldt らが撥弦の減衰から求めた D 線の基本モードの Q は、楽器の上の開放弦で 410、モノコードで 480 です。剛な台の上では、その約 2 倍になるとされます[9]。ηX は、剛な台の上での基本モードの Q が約 900 になる値にしました。

押さえた指の損失は、弦の端に置いた抵抗で波が反射するときの損失とみなし、高いモードほど 1/n で小さくします。弦が駒から胴へ失う損失の式[10]の Y に、端の抵抗の逆数を入れた形です。

η胴≈2Z0Re⁡Yπn

ねじり

弓は弦の表面に触れるので、弦がねじれて表面が動く分も、弓の位置の速度に入ります。ねじりは両端を固定した調和なモードで表し、Q はどのモードも同じとします[11]。

ct
ねじり波の速さ
Zt
弦の表面で見たねじりのインピーダンス
Qt
ねじりのモードの Q
mt
表面の速度で見たモードの質量
ft,n=nct2Lσt,n=πft,nQtmt=ZtL2ct
  • E 線: Galluzzo らの測定(基本 4.6 kHz、0.61 kg/s、Q 30)[4]。横波に対して速さ 7 倍、インピーダンス 3.6 倍
  • 巻線の 3 本: 速さは横波の 5.5 倍(合成芯の目安 5〜6 倍[12])、インピーダンスは 2.5 倍(目安 2〜4 倍[9])、Q 20

巻線の Q は、Woodhouse・Loach がチェロの D 線で測った値(ナイロン芯 46、スチール芯 34、ガット芯 20)の下の端です[11]。Q を 35 にすると、D 線と G 線の和音や重音で多重の滑りが残りやすくなりました。弓の毛の弾性など、模型にない仕組みの分をここで受け持っているとみなします。

駒での結合

弦は駒で胴につながっています。駒のアドミタンス Y(力に対する速度)があると、弦のモードの複素角周波数は、1 次の摂動として下の式のように移ります[13]。Y は駒の上端の、その弦を弓で擦る向きの値です。実部が大きい周波数ほど、エネルギーが胴へ逃げて早く減衰します。

弦どうしの駒を通じた結合は入れていません。弓で擦っていない弦は、前に擦った余韻のほかは鳴りません。

ω=ωn+iηnωn2+iTLY(ωn)

弓と弦の摩擦

弦の横の変位をモードの和で表し、弓の位置 xb に摩擦力 f が働くとします。弓は弦に 1 点で触れるとします。駒にかかる力は、各モードの駒での傾きの和です。

an
第 n モードの振幅
m
モードの質量
ωn,σn
駒との結合を含む角周波数と減衰率
xb
駒から弓までの距離 βL
vb
弓の速さ
F
弓圧
v
弓の位置の弦の表面の速度
vt
ねじりによる表面の速度
y(x,t)=∑nan(t)sin⁡knxm(a¨n+2σna˙n+ωn2an)=fsin⁡knxbm=μL2v=∑na˙nsin⁡knxb+vtF駒=∑n(T+EIkn2)knan

1 刻みの解き方

力を 1 刻みの間で一定とすると、モードは複素指数で厳密に進められます。すると、次の刻みの弓の位置の速度は、力がないときの速度 vh に、力に比例する分を足したものになります。この直線と摩擦の特性との交点で、その刻みの v と f が決まります。Friedlander の作図を使う、McIntyre・Schumacher・Woodhouse の方法です[14]。

  1. モードを進める力がないとして
  2. 弓の位置の速度vh
  3. 交点直線と摩擦の特性
  4. 力を加えるモードと温度を更新
  5. 駒の力胴へ
v=vh+GfG≈h(∑nsin2⁡knxbm+∑nsin2⁡knxbmt)

h は刻みの長さです。前の和は横振動、後の和はねじりのモードについてとります。

摩擦曲線

松脂の摩擦係数を、滑りの速さ s の関数とする模型です。定常の滑りの測定に当てはめた曲線を使います[15][16]。止まっているときの摩擦係数は μs=1.2 です。

μ(s)=0.4e−s/0.01+0.45e−s/0.1+0.35s=|v−vb||vb−vhG|≤μsFf=−Fμ(s)sgn⁡(v−vb)
  • 固着: 弓と同じ速さで動くのに要る力が μsF 以下なら、弦は弓に付いて動く(上の不等式)
  • 滑り: 直線と Fμ(s) の交点
  • 交点が 3 つあるとき: いまいる枝(固着か、同じ向きの滑り)に留まれる限り留まる(履歴の規則)[14]

このツールでは、摩擦曲線は曲の中で二重の滑りが続いた音にだけ使います(「弓の動かし方」の節)。

熱の模型

ふだんは Woodhouse の熱の模型を使います[17]。摩擦係数を、滑りの速さではなく、接触部の温度の関数とする模型です。松脂は滑りの熱で温まって柔らかくなり、摩擦が下がります。μ(θ) は、定常の滑りの測定を温度の関数に直した Woodhouse の図を、2.5 K ごとに読んだ値です。1.2 から 0.35 まで下がります。

滑っている間の力は限界の値 μ(θ)F のままなので、交点は常に 1 つに決まり、履歴の規則は要りません[17]。

θ
接触部の温度の、周りからの上昇
a
接触の半径(1 N のとき a1 = 250 µm)
δ
変形する層の厚さ(1 µm)
ρr,cr
松脂の密度と比熱
K,ρ,cp
弦・弓の毛の熱伝導率・密度・比熱
g
伝導の核(弦の側と弓の毛の側の和)
f=−Fμ(θ)sgn⁡(v−vb)|f|s=∫g(t−τ)θ(τ)dτ+saδρrcrθ+ρrπa2δcrdθdtg0=2λhgn=2λh(n+1−2n+n−1)λ=πa2πKρcpa=a1F1 N

左辺は摩擦の発熱です。右辺は順に、両側の固体(弦と弓の毛)への伝導、流れ込む松脂が運ぶ熱、接触部にたまる熱です[15][17]。伝導の核は半無限の固体の式を刻みで離散化したもので、温度の履歴を畳み込みます。値は Woodhouse の表のものです[17]。

  • 伝導の核: 直近の 6 刻みは上の式のまま計算し、それより古い部分は裾を指数関数 17 個(時定数 20 µs〜4 s)の和で近似する
  • 弓の毛の側: 滑ると新しい毛が入るので、滑った距離 8a/(3π) で温度の履歴を忘れる(Smith・Woodhouse の打ち切り[15]を指数関数の形にしたもの)
  • 弓が離れている間: 接触の大きさを 0.05 N のときで代え、接触部を冷やし続ける

松脂のむら

弓で擦った音の周期の揺れは、主に弓の毛の上の松脂のむらなど、外から加わる不規則さによるとされます[18]。そこで、弓圧(摩擦の限界)に小さな乱数を掛けます。乱数は毛の上の位置で決まるとし、弓が ℓ = 0.5 mm 進むと入れ替わるように、弓の速さに応じた 1 次の低域通過に通します。大きさ ε(標準偏差)は入力の「松脂のむら」で選びます。

rk+1=αrk+1−α2ukα=e−|vb|h/ℓF′=Fmax⁡(0,1+εrk)

uk は分散 1 の一様乱数です。

計算の刻み

高い音では、滑りの時間(周期の約 β 倍)が数標本しかなく、固着と滑りの切り替わりを追えません。そこで、滑りの間が 24 刻み以上になるように、1 標本を N 刻み(最大 10)に分けます。熱の模型は、20 µs の刻みで十分に収束するとされます[17]。

N=⌈24f1βfs⌉

弓圧の範囲と弦の振れ

Helmholtz の運動では、弓の位置の弦は 1 周期のうち 1−β の間は弓と同じ速さで固着し、β の間だけ逆向きに滑ります[19]。計算結果の「1 周期の滑りの割合」は β です。

弓圧が強すぎると、固着を保てずに音がつぶれます。弱すぎると、1 周期に何度も滑ります。弓の枠の上限と下限は、次の式で求めます。

Fmax
弓圧の上限(Schelleng の式)
Fmin
弓圧の下限の目安
μs−μd
止まっているときと速く滑るときの摩擦係数の差。この模型では 1.2 − 0.35 = 0.85
clower
測った Fminβ2
Fmax=2Z0vbβ(μs−μd)Fmin=clowerβ2xb=βL

上限は Schelleng の式で[19]、ヴァイオリンの弦の実測とよく合います[9]。下限は、Schelleng の式では実測の 1/6〜1/11 にしかならず、実測は弓の速さにもよりません[9]。そこで下限は、Schoonderwaldt らが測った clower を β2 で割った値を目安にします。

条件clower使う弦
D 線の開放弦0.69 mNA・D・G 線の開放弦
D 線の押さえた音1.56 mNA・D・G 線の押さえた音
E 線(モノコード)0.17 mNE 線の開放弦

押さえた E 線の測定はないので、E 線の値に、D 線の押さえた音と開放弦の比(約 2.3)を掛けた 0.38 mN を使います。

駒の力と弦の振れ

理想の Helmholtz の運動では、駒にかかる力はのこぎり波で、跳びの大きさは 2Z0vb/β です[19]。計算結果の「駒の力の振幅」はその半分です。

弓の位置の弦の全振幅は、弓が固着している間に進む距離です[9]。振れの包絡を両端を結ぶ放物線とすると、弦の中ほどの全振幅が求まります。

F^駒=Z0vbβAb=(1−β)vbf1A中=vb4βf1=F^駒4Z0f1

計算結果の「弦の中ほどの全振幅」は、計算した駒の力の山を右の式に入れた値で、図の弦の振れにも使います。下の小さな字は、弓の速さと β から求めた理想の値です。

駒

駒は、Woodhouse の 2 つの模型を合わせたものです[20]。

  • 揺れ: 駒の上部(慣性モーメント I)が、ねじりのばね K を介して 2 本の足を逆向きに押す
  • 上下の動き: 質量 mb が、ばね kb を介して 2 本の足を同じ向きに押す
Lb
揺れの回転の中心から上端までの長さ(19.5 mm)
d
足の間隔(30 mm)
Yij
足の位置の胴のアドミタンス(1 = 低音側、2 = 高音側)
R
表板の回転のアドミタンス
Yr
揺れによる駒の上端の水平のアドミタンス
f揺れ=12πKIf上下=12πkbmbYr=Lb2(iω+KR)K−ω2I+iωIKRR=Y11−Y12−Y21+Y22d2

足を固定したときの共振は、揺れが約 3 kHz、上下が約 6 kHz です(Reinicke の測定)[21]。慣性モーメントは Woodhouse が測定に当てはめた 4.3×10−7 kg·m² です[20]。上下の質量 1.5 g は、Woodhouse の図の 7 kHz より上の垂直のアドミタンスから求めました[20]。

胴が動くと、揺れの共振は 2〜3 kHz の幅の広い山(bridge hill)になります[20]。上下の動きも同じ形の式で表せます。

このツールは上の式をそのまま使いません。胴のモードに駒の揺れと上下の動きを 1 つずつ足し、ばねでつないだ系の固有モードを先に求めます。音を作る側は、これを独立な共振器の和として回します。

弦の向き

駒の上端は曲線(半径 42 mm)なので、4 本の弦を擦る向きは少しずつ傾いています。弓の向きの力を、水平(E 線を擦る向き)と垂直の成分に分けて駒に入れます。

  • E 線: 水平から 24.3°
  • A 線: 7.9°
  • D 線: −7.9°
  • G 線: −24.3°

弱音器

弱音器は、駒の上端に載せる質量 m弱 として扱います。ねじりのばねは変えずに慣性モーメントを増やし、上下の動きの質量にも同じだけ足します[20]。足を固定したときの共振は次の値に下がり、計算結果の「駒の揺れ」「駒の上下」に出ます。

f揺れ′=f揺れII+m弱Lb2f上下′=f上下mbmb+m弱

ゴムの弱音器は約 1 g の実測[22]、金属の弱音器は Woodhouse の 5 g の計算例[20]に合わせました。

胴

胴は振動モードの和で表します。2 点 x・y の間のアドミタンスは次の式です[23]。uj は質量で正規化したモードの形です。

Y(ω)=iω∑juj(x)uj(y)ωj2−ω2+2iζjωjω

シグネチャモード

600 Hz より下には、どのヴァイオリンにもある 4 つのシグネチャモードを置きます。周波数は、Bissinger が測った 17 挺の平均です[24]。

モード周波数減衰比(支えなし)減衰比(構えたとき)アドミタンスの山放射の山
A0275 Hz2.5 %2.39 %−30 dB和の規則
CBR407 Hz1.29 %2.0 %−22 dB0
B1−475 Hz1.22 %1.99 %−15.5 dB1.01 Pa/N
B1+541 Hz1.15 %3.99 %−14.5 dB0.95 Pa/N
  • 支えなしの減衰比と放射の山: Bissinger の 14 挺の平均[25]。放射の山は 1.2 m の球面で平均した音圧 ÷ 力
  • 構えたときの減衰比: Marshall の測定(Bissinger の引用)[26]
  • アドミタンスの山: 駒の上端の水平のアドミタンス(1 s/kg を 0 dB)。Woodhouse の図から読んだ値[21]

CBR は表板と裏板がほぼ同じ向きに動き、体積の変化が小さいので、ほとんど音を出しません[25]。A0 は胴の空気の共振で、駒のアドミタンスには小さな山しか出ませんが、音は強く出ます[21]。

低い周波数では、駒は剛体として揺れます。そこで、表の山の高さから、2 本の足の動きの差 Δu と、モードの体積の変化 V を決めます。高音側の足(魂柱の近く)の動きは、低音側の 0.25 倍としました(Woodhouse の図から読んだ目安)[20]。

Y山=(Lbd)2(Δu)22ζωp山F駒=LbdρaVΔu8πrζ∑jVjΔujωj2=0

r = 1.2 m は音圧を求める距離です。A0 の体積の変化は、周波数 0 で胴の体積の変化の和が 0 になる条件(3 つ目の式)から決めます。f 孔の空気の出入りが、胴の体積の変化を打ち消すためです。Weinreich の和の規則です[27]。

多数のモード

760 Hz から 10 kHz には、乱数で多数のモードを置きます。ギターの「統計的なギター」と同じ方法です[6]。モードの平均の間隔 Δf は 55 Hz で、Weinreich の見積り 44 Hz[28]と Bissinger が数えた値[25]の間にとりました。間隔は 0.6〜1.4 倍の範囲でばらつかせます。

足の位置のモードの形は、平均のアドミタンスに合う正規分布の乱数です。1 つのモードの Re⁡Y を周波数で積分すると u2/4 なので、間隔 Δf で並ぶモードの平均の実部は ⟨u2⟩/(4Δf) になります。2 本の足の平均のアドミタンス [s/kg] は、Woodhouse の図から読んだ傾きです[20](f は Hz)。

⟨uj2⟩=4Δf⟨Re⁡Y⟩⟨Re⁡Y低音側⟩=0.0221+(f/4000)2⟨Re⁡Y高音側⟩=0.031+(f/3500)2

乱数の種は入力の「個体」で選びます。同じ種なら同じ胴になります。

減衰

支えなしの減衰比は、1.5 kHz までは Q ≈ 33 です。典型的な胴のモードの Q は 25〜50 です[27]。その上は f−0.34 で減らします[25]。モードの重なりは 1〜2 kHz で 1 を超え、Woodhouse の記述に合います[23]。

奏者が構えると、低い周波数ほど減衰が増えます。増え方は f−0.88 にします[26]。入力の「支えなし」「構えたとき」で選びます。

ζ支えなし=0.015min⁡(1,(f1500)−0.34)ζ構え=max⁡(ζ支えなし,0.03(f500)−0.88)

胴の枠の計算結果のシグネチャモードの周波数は、駒とつなぐ前の値です。

放射

音圧は、Bissinger が放射を測った球面の半径と同じ 1.2 m 先で求めます[24]。

  • シグネチャモード: 体積の変化による単極子。どの向きにも同じ
  • 多数のモード: 放射効率 σ に合う大きさの正規分布の乱数。向きの違う 2 点で別の乱数にし、左右の出力に使う
qj
モードの変位
ρa,ca
空気の密度と音速
S
放射する面の面積(0.13 m²)[25]
M
振動する殻の質量(0.21 kg)。楽器の 400〜450 g のうち表板・横板・裏板が半分という目安から[29]
fc
実効的な臨界周波数(3.9 kHz、14 挺の平均)[24]
p=ρa4πr∑jVjq¨j+∑jgjq˙j⟨gj2⟩=(ρacar)2σS4πMσ=min⁡(1,(ffc)0.9)

2 つ目の式は、Bissinger の放射効率の定義(球面で平均した音圧の 2 乗と、表面で平均した速度の 2 乗の比)を、モード 1 つに当てはめたものです[25]。臨界周波数より下の傾きは、Bissinger の帯域の平均の比(音圧 ÷ 力と速度 ÷ 力の比)が 625 Hz から 3.9 kHz で約 2 倍になることに合わせました[24]。平板の式の f2 よりゆるやかです。

胴の枠の図は、駒の上端の水平のアドミタンスと、1.2 m 先の音圧 ÷ 力(左右の 2 点の 2 乗平均)です。

弓の動かし方

手で弾く

手で弾くときは、弓の速さ vb・弓圧 F・駒からの距離 β を入力の値にします。

  • 弓は 0.08 s で入力の速さまで加速し、毛(0.65 m)の端の手前で返す
  • 2 本の弦に触れるときは、弓圧を半分ずつ受け持つ
  • 弓が遅くなる間(返すとき)は、弓圧を弱める
  • 揺らぎは、曲を弾くときの半分の大きさで足す

曲を弾く

楽譜の音は、弓を返す音ごとに「ひと弾き」にまとめます。スラーのない音ごとに弓を返し、最初は下げ弓です[30]。同時に始まる音(重音・和音)は同じひと弾きです。

音量はほぼ vb/β で決まり、10 倍で 20 dB 上がります[31]。そこで、強弱の目安 D(mf を 0 dB)から vb/β を決め、その増え方を vb と β に半分ずつ分けます。弓圧は、弓が触れている弦ごとに、その弦の Z0 と β から Schelleng の上限の 0.385 倍にします。初めは 0.7 倍でしたが、試聴でその 55 % にしたときに、長い曲を通して雑音が気にならなくなりました。演奏の枠の「弓圧」で、この倍率をさらに 40〜200 % に変えられます。重音・和音では弦ごとに決めるので、弓圧の合計は 1 本のときのおよそ 2 倍になります。

vbβ=3.3×10D/20 m/sβ=0.1×10−D/40kβF=0.385Fmax
  • β: 弓が触れているいちばん高い弦で決め、弦ごとの範囲に収める。kβ は E 線と G 線で 1.3、A 線と D 線で 1
  • vb: 0.22〜0.5 m/s に収め、「弓の使い方」で決めたひと弾きごとの倍率を掛ける
  • ほかの弦の β: 同じ vb/β から、その弦の範囲に収める。重音・和音の下の弦は 0.1 より小さくしない(強く鳴らしすぎると多重の滑りに落ちやすい)

ひと弾きの形

  • 弓を当てて始めるとき: 15 ms 前から弦に弓を当て、弓の速さを 0.08 s(E 線)または 0.12 s(ほかの弦)で上げる
  • 弓を弦に付けたまま返すとき: 弓の速さを 8 ms で下げ、10 ms で上げる(音の落ち込みは ±40 ms の平均で −1〜−2 dB)
  • 弓を離すとき: 弓を動かしたまま、終わりの 40 ms で弓圧を抜いて弦から離す(弦は鳴り残る)
  • 弓圧: 速さを上げ下げする間も、0.2 倍より下げない
  • 前の音が終わっている音: 20 ms 前から弓が触れる
  • スラーで弦を移る音: 12 ms かけて、弓が触れる弦を移る
  • ひと弾きごとのばらつき: 弓圧 8 %、速さを上げる時間 15 %、速さ 5 %(標準偏差)

弓の速さ・弓圧・β には、ゆっくりした揺らぎ(人の手の揺れ)を足します。時定数 0.05・0.3・1.5 s の 3 つの Ornstein–Uhlenbeck 過程の和で、相対の標準偏差は弓の速さ 4 %、弓圧 6 %、β 5 % です。入力の「揺らぎ」で 0〜2 倍にします。

弓の使い方

弓の毛は 0.65 m しかありません。奏者は、弓の端で音が途切れないように、弓をどこからどれだけ使うかを前もって考えます(弓の配分)。このツールも、曲を始めるときに全部のひと弾きの弓の使い方を決めます。図の弓の位置はこの計画に従って動き、弓が弦から離れている間は浮かせて薄く描きます。

  1. 弓を離すところ休み・和音の前・楽句の終わり
  2. 長すぎるひと弾きを分ける途中で弓を返す
  3. 弓の向き交互。和音は下げ弓
  4. 弓の位置と速さの倍率毛の長さに収める
  • 弓を離すところ: 前の音との間が空くところ(休み)、3 音以上の和音の前、0.3 s 以上のひと弾きで終わる楽句の終わり。間が空いていなければ、前の音の終わりを音の長さの 1/4(0.04〜0.1 s)縮めて、弓を離して動かす時間を作る。離している間に、次のひと弾きを始める位置へ弓を動かす
  • 弓を離して始める和音は下げ弓にし、元の近く(毛の元から 6 cm)から弾く。続けて下げ弓になるときは、弓を元へ戻す
  • 弓の速さを 0.7 倍にしても毛の長さに収まらない長い音や長いスラーは、奏者と同じく弓を遅くして、1 回の弓で弾き切る。弓の速さは 0.08 m/s まで落とし、β の下限を 0.6 倍まで下げる(弓を駒へ寄せる)。弓圧も弓の速さ ÷ β に比例して下がるので、音は小さくなる。シャコンヌの最後の音(5.45 s)では、弓を返して弾いたときより約 9.5 dB 小さい。それでも収まらない音(アダージョ BWV 1001 の最後の和音、16.6 s)は、途中で弓を返す(音の境目が近くにあればそこで)
  • 弓を離さずに続くひと弾きの列は、毛の両端に 3 cm ずつ余裕を残して収める。後ろのひと弾きから順に、始められる位置の範囲を求め、前から、弓の速さの倍率(0.7〜1.15、ただし乱れにくい弓の速さの範囲の内)が 1 に近くなる長さを選ぶ。弓を離したあとは、ひと弾きが弓の中ほどに来る位置から始める
  • どうしても収まらないところでは、そこで弓を離して位置を直す

二重の滑りの見張り

熱の模型でも、D 線と G 線の和音や重音では、1 周期に 2 回滑る二重の滑りに落ちることがあります。二重の滑りでは、駒の力の第 2 倍音が基音より強くなります。そこで曲を弾く間は、駒の力の基音と第 2 倍音を時定数 30 ms でならして追い、次の条件がそろう時間を数えます。

  • 弓が 0.11 m/s 以上で動いている
  • 音の始まりと、弓を返したときから 80 ms 以上たっている
  • 第 2 倍音が基音より強い
  1. 弓圧を上げるD・G 線。最大 2 倍
  2. 摩擦曲線へ移る続いたら、その音の残り
  3. 熱の模型へ戻すその弦の次の音で

条件が 0.25 s(D・G 線)または 40 ms(E・A 線)続いたら、その音の残りを摩擦曲線の模型で鳴らします。このツールの値では、摩擦曲線のほうが二重の滑りに落ちにくかったためです。摩擦曲線では、弓圧を Schelleng の上限の 0.27 倍にします(上げた倍率は掛けません。掛けると上限に近づき、音が割れます)。

乱れの見張り

弓圧が Schelleng の上限に近いと、弦の動きが周期的でなくなり、ざらついた音になります(乱れた運動)。奏者は耳で聞いて弓圧を緩めます。このツールでは、弦ごとに駒の力を 1 周期前の値と比べ、差の 2 乗の平均と 2 乗の平均を時定数 15 ms でならして追います。

⟨(FB(t)−FB(t−T))2⟩/2⟨FB2⟩>0.12

T は弦の周期です。音の始まりと弓を返したときから 60 ms より後に(返すと駒の力の向きが逆になり、1 周期前との差が大きく出るため)、この比が 0.12(−9 dB)を超えている間は、弓圧の倍率を時定数 50 ms で 0.75 倍まで下げ、収まったら 0.3 s で戻します。乱れている間は、二重の滑りとは数えません。

左手

押さえる音が変わると、弦の振動する長さに合わせてモードの周波数・減衰・形を作り直します。各モードの振幅はそのまま引き継ぎます。弦の長さと β は 32 標本ごとに入れ替えます。

音の高さは、スラーで同じ弦の音へ移るときは 30 ms、弓を返すときは 10 ms かけて移します。

ビブラートは、押さえた弦の振動する長さを正弦波で揺らします。開放弦には掛けません。標準の速さ 5.9 Hz は、Mellody・Wakefield が測った平均です[32]。幅 w は上下の全幅で、標準は 50 セントです。

Δp=w2sin⁡2πfvt

曲では、いちばん高い音の流れでビブラートを決め、押さえている弦すべてに同じだけ掛けます(左手は 1 つ)。

  • 掛ける音: 0.3 s 以上の音だけ
  • 始め: 音の出だしから 0.08〜0.18 s 遅れて、0.3 s かけて幅を広げる。速さは出だしの 0.88 倍から上げる
  • 終わり: 幅を 0.35 倍まで、速さを 0.88 倍まで下げる。スラーで続く音へは幅を 0.65 倍までしか下げずにつなぐ
  • 長い音: 速さを 2 s かけて 5 % 上げる
  • 強弱: 幅を 10D/60 倍にする
  • 音ごとのばらつき: 速さ 4 %(標準偏差)、幅 0.9〜1.1 倍

楽譜から音符へ

曲は、声部ごとの楽譜の音を、弦ごとの音符の列と強弱の曲線に直してから弾きます。

時刻

全声部の音の出だしを「出来事」とします。出来事ごとの長さに次の倍率を掛けて秒にします。KTH の演奏規則の Phrase arch・Punctuation・Final ritardando にあたります[33]。楽句は、曲ごとに決めた小節数で区切ります。

  • 楽句の弧: 楽句の中ほどで速く、両端で遅く(±3 %)
  • 楽句の最後の出来事: 7 % 延ばす
  • 節の終わり(シャコンヌ): 直前の 3 拍を最大 15 % 遅く
  • 曲の終わり: 最後の 2 拍を最大 25 % 遅く
  • フェルマータ: 1.6 倍
P(x)=sin⁡(πx1.61)ΔtΔt0=11+0.06(P−0.5)

x は楽句の中の位置(0〜1)で、弧 P は 0.65 の位置で最大になります。

強弱

強弱の目安 D は、予定の折れ線に、楽句の弧、0.8 s 以上の音の中のふくらみ、音の高さによる分を足したものです。高い音ほど大きくする分は High loud の規則にあたります[33]。

D=D予定+3(P−0.4)+Dふくらみ+D高さDふくらみ=2(sin⁡πu0.8−0.4)D高さ=2n−n中12

u は音の中の位置(0〜1)、n はいちばん高い音の高さ(半音)、n中 は曲のいちばん高い音の流れの中央値です。D高さ は ±3 dB までにします。

バッハの曲は原典に強弱の記号がないので、予定はこのツールで決めた仮定です。エクルズの曲は、楽譜の強弱の記号と松葉を使います。記号のところで 0.25 拍かけて段を移り、松葉は次の記号まで直線で移ります。

入力の表情で「楽譜どおり」を選ぶと、楽句の弧・延び・ふくらみ・音の高さによる分・出だしのばらつきを外し、強弱は予定の最初の値だけにします。エクルズの曲は楽譜の記号のままです。

弦と重音・和音

  • 単音: 開放弦より上で最も高い弦(低いポジション)[30]
  • G 線の開放弦(G3)より低い音: 1 オクターブ上げる(アダージョ BWV 1001 の楽譜に 1 音ある)
  • 2 音の重なり: 隣り合う弦の重音(弓はまっすぐなので、間の弦をとばした 2 本は同時に弾けない)。隣り合う弦に置けなければ高い音だけ。押さえる指の幅は 6 半音まで
  • 3〜4 音の和音: 下の 2 音を弾いてから上の 2 音へ移る(3 音では真ん中の音を続ける)。下の部分は 0.11 s(出来事の 0.35 倍まで)
  • 0.2 s より短い出来事の和音: 上の 2 音だけ
  • 弾けない和音: いちばん高い音を残して 1 音ずつ外す
  • 上の音が先に終わり、下の音の楽譜の長さが 0.12 s 以上残る和音: 同じ弓のまま下の音へ戻る(内声の旋律)
  • 弓を返す出来事: 続いている音も弾き直す
  • 間の弦をとばして移る(D 線から E 線など): 前の弦から弓が離れきってから次の弦に触れる。前の音の終わりを約 20 ms 詰め(音の半分まで)、足りなければ次の音の触れ始めを遅らせる

和音を 2 つの重音に分けて続けて弾く形は標準的な弾き方で、Demoucron・Rasamimanana の実装では下の重音から上の重音へ約 100 ms で移ります[34]。

シャコンヌの分散和音

シャコンヌの 89〜120 小節と 201〜207 小節(楽譜に arpeggio とある区間)では、8 分音符ごとに、鳴っている和音を 32 分音符 4 つに分けて弾きます。順は中・低・高・低で、楽譜に書き出された最初の形と同じです。2 音ずつスラーにします。4 音の和音では、中の音を 8 分音符ごとに入れ替えます。

トリル

  • 掛ける音: いちばん高い音で、0.15 s より長い音だけ
  • 始め: 調号に合わせた上の隣の音から
  • 速さ: 1 秒に 6.5 音から 12 音へ上げ、終わりで 9.5 音へ少し落とす
  • 長さ: 音の 8 割をトリルにし、残りは元の音を半分の幅のビブラートで延ばす

出だしのばらつき

弓を返す出来事の出だしを、標準偏差 6 ms(±20 ms まで)でずらします。Noise の規則にあたります[33]。

残響

部屋の残響時間を Eyring の式で求め[35]、16 本の遅延線のフィードバック遅延網で残響を作ります[36]。ギターのページと同じものです。

V
部屋の容積
S
部屋の表面積
α¯
平均吸音率
m
空気の吸収。ISO 9613-1 の値[37]
A
等価吸音面積
rc
臨界距離。A から求める
r
聴く位置

1 m 先の直接音に対する残響音の大きさは、臨界距離 rc で決まります。聴く位置 r での比は r/rc です。全体の大きさは、直接音と残響音のエネルギーの和が 1 m 先の直接音と同じになるようにそろえます。

T60=0.161V−Sln⁡(1−α¯)+4mVrc=A16πA=−Sln⁡(1−α¯)

計算の範囲と出力

  • 音: 1 m 先の音圧。1.2 m 先で求めた音圧を 1.2 倍して直す。音量 0 dB のとき、1 Pa を出力のフルスケールとする
  • 弦の横振動のモード: 21.6 kHz(またはサンプリング周波数の 0.45 倍)まで、最大 128 個
  • 弦のねじりのモード: 同じ周波数まで、最大 40 個
  • 胴のモード: シグネチャモード 4 個、760 Hz〜10 kHz の多数のモード、駒の揺れと上下の動き

スピーカーから出す音は、多数のモードの放射を向きの違う 2 点で求めて左右に分けたステレオです。シグネチャモードの音は左右で同じです。残響と、フルスケールを超えそうなときだけ働くリミッタは、再生の音だけに付けます。計算結果と音の波形は左右の平均で、残響を含みません。

出典

  1. 硬い弦の周波数N. H. Fletcher, “Normal vibration frequencies of a stiff piano string,” J. Acoust. Soc. Am., vol. 36, no. 1, pp. 203–209, 1964
  2. 開放弦の振動する長さ(32.8 cm)K. Guettler, “Some typical properties of bowed strings,” knutsacoustics.com/files/Typical-string-properties.pdf
  3. Pickering が測った Dominant の張力と外径(この資料の引用による)S. Serafin, “Impact of String Stiffness on Virtual Bowed Strings,” CCRMA, ccrma.stanford.edu/~jos/stiffbowed/Modeling_stiffness_string.html
  4. E 線の曲げ剛性・損失係数・ねじりの測定P. M. Galluzzo, J. Woodhouse and H. Mansour, “Assessing friction laws for simulating bowed-string motion,” Acta Acustica united with Acustica, vol. 103, pp. 1080–1099, 2017
  5. 巻線の弦の半径とヤング率、芯の半径を弦の半分とする扱いC. Desvages, “Physical modelling of the bowed string and applications to sound synthesis,” PhD thesis, University of Edinburgh, 2018
  6. 弦の損失の式の形、統計的なモード(統計的なギター)J. Woodhouse, “On the synthesis of guitar plucks,” Acta Acustica united with Acustica, vol. 90, pp. 928–944, 2004
  7. 弦の損失、空気の粘性C. Valette, “The mechanics of vibrating strings,” in Mechanics of Musical Instruments, Springer, 1995, pp. 115–183
  8. 巻線の弦の損失係数(チェロ弦の測定)H. Mansour, J. Woodhouse and G. P. Scavone, “Enhanced wave-based modelling of musical strings. Part 1: plucked strings,” Acta Acustica united with Acustica, vol. 102, pp. 1082–1093, 2016
  9. 弦の基本モードの Q、ねじりのインピーダンスの目安、弓圧の上限と下限の測定、弓の位置の弦の振れE. Schoonderwaldt, K. Guettler and A. Askenfelt, “An empirical investigation of bow-force limits in the Schelleng diagram,” Acta Acustica united with Acustica, vol. 94, no. 4, pp. 604–622, 2008
  10. 弦が駒から胴へ失う損失の式J. Woodhouse, Euphonics, euphonics.org/5-1-1-coupling-a-string-to-the-instrument-body/
  11. ねじりのモード(調和で Q が一定)、チェロの D 線のねじりの QJ. Woodhouse and A. R. Loach, “The torsional behaviour of cello strings,” Acustica/Acta Acustica, vol. 85, pp. 734–740, 1999
  12. ねじり波と横波の速さの比の目安K. Guettler, “String stiffness,” knutsacoustics.com/files/String-stiffness.pdf
  13. 駒での結合C. E. Gough, “The theory of string resonances on musical instruments,” Acustica, vol. 49, pp. 124–141, 1981
  14. 弦の応答の直線と摩擦の特性の交点(Friedlander の作図)、履歴の規則M. E. McIntyre, R. T. Schumacher and J. Woodhouse, “On the oscillations of musical instruments,” J. Acoust. Soc. Am., vol. 74, pp. 1325–1345, 1983
  15. 摩擦曲線のもとの測定、熱の釣り合いと伝導の核、弓の側の打ち切りJ. H. Smith and J. Woodhouse, “The tribology of rosin,” J. Mech. Phys. Solids, vol. 48, pp. 1633–1681, 2000
  16. 摩擦曲線の式(定常の滑りへの古典的な当てはめ)J. Woodhouse and P. Galluzzo, “Enhanced Tribological Modelling of Violin Rosin,” Tribology Letters, vol. 73, art. 128, 2025
  17. 熱の模型、温度と摩擦係数の関係、接触と材料の値、刻みの収束J. Woodhouse, “Bowed string simulation using a thermal friction model,” Acta Acustica united with Acustica, vol. 89, pp. 355–368, 2003
  18. 周期の揺れの主な原因が、松脂のむらなど外からの不規則さであることM. E. McIntyre, R. T. Schumacher and J. Woodhouse, “Aperiodicity in bowed-string motion,” Acustica, vol. 49, pp. 13–32, 1981
  19. Schelleng の弓圧の上限、Helmholtz の運動の滑りの割合と駒の力J. Woodhouse, Euphonics, euphonics.org/9-3-1-shellengs-bow-force-limits/
  20. 駒の模型と当てはめた値、弱音器の扱いと 5 g の計算例、足の位置の平均のアドミタンス、シグネチャモードの足の動きの比J. Woodhouse, Euphonics, euphonics.org/7-5-tonal-adjustment-in-the-violin/、euphonics.org/7-5-1-modelling-the-violin-bridge/
  21. 足を固定した駒の共振(Reinicke の測定)、シグネチャモードのアドミタンスの山、A0 の現れ方J. Woodhouse, Euphonics, euphonics.org/5-3-signature-modes-and-formants/
  22. 約 1 g の弱音器の測定B. Elie, F. Gautier and B. David, J. Acoust. Soc. Am., vol. 136, no. 3, pp. 1385–1393, 2014
  23. モードの和のアドミタンス、モードの重なりJ. Woodhouse, “The acoustics of the violin: a review,” Rep. Prog. Phys., vol. 77, 115901, 2014
  24. シグネチャモードの周波数(17 挺の平均)、実効的な臨界周波数(14 挺の平均)、帯域の平均の放射、測定の球面の半径G. Bissinger, J. Acoust. Soc. Am., vol. 124, no. 3, pp. 1764–1773, 2008
  25. 支えなしの減衰と周波数による減り方、B1 の放射、CBR の放射が弱いこと、放射効率の定義、放射する面の面積、モードの数G. Bissinger, J. Acoust. Soc. Am., vol. 132, no. 1, pp. 465–476, 2012
  26. 構えたときの減衰(Marshall の測定の引用)と周波数による増え方G. Bissinger, Proc. SMAC 2013, pp. 32–37, 2013
  27. 胴のモードの Q、A0 の和の規則(Weinreich)C. E. Gough, Acoustics Today, vol. 12, no. 2, pp. 22–30, 2016
  28. モードの平均の間隔の見積り(44 Hz)G. Weinreich, “Directional tone color,” J. Acoust. Soc. Am., vol. 101, no. 4, pp. 2338–2346, 1997
  29. 楽器の質量の内訳E. V. Jansson, Acoustics for violin and guitar makers, Chapter VII, speech.kth.se/music/acviguit4/part7.pdf
  30. スラーのない音ごとに弓を返す規則、単音の弦の選び方G. K. Percival, “Physical modelling meets machine learning: performing music with a virtual string ensemble,” PhD thesis, University of Glasgow, 2013
  31. 音量が弓の速さ ÷ β で決まることE. Schoonderwaldt, PhD thesis, KTH, 2009, diva-portal.org/smash/get/diva2:133385/FULLTEXT01.pdf
  32. ビブラートの平均の速さ(5.9 Hz)M. Mellody and G. H. Wakefield, J. Acoust. Soc. Am., vol. 107, no. 1, pp. 598–611, 2000
  33. 演奏の規則(Phrase arch・Punctuation・Final ritardando・High loud・Noise)A. Friberg, R. Bresin and J. Sundberg, “Overview of the KTH rule system for musical performance,” Advances in Cognitive Psychology, vol. 2, no. 2–3, pp. 145–161, 2006
  34. 和音を 2 つの重音に分けて弾く実装M. Demoucron and N. Rasamimanana, “Score based real-time performance with a virtual violin,” Proc. DAFx-09, Como, 2009
  35. 残響時間C. F. Eyring, “Reverberation time in ‘dead’ rooms,” J. Acoust. Soc. Am., vol. 1, no. 2A, pp. 217–241, 1930
  36. 残響J.-M. Jot and A. Chaigne, “Digital delay networks for designing artificial reverberators,” AES 90th Convention, Preprint 3030, 1991
  37. 空気の吸収ISO 9613-1

このツールで決めたこと

次の値と方法は、文献に基づかず、このツールで選んだものです。

  • E 線の外径(0.25 mm)
  • 低い周波数で増える弦の損失(剛な台の上での基本モードの Q を約 900 に)
  • 押さえた指の損失(第 1 モードで 2.5×10−3。Z0 = 0.2 kg/s の弦の端に約 50 kg/s の抵抗を置いた値)
  • 巻線の弦のねじりの値(速さの比 5.5、インピーダンスの比 2.5、Q 20)
  • 弦の長さが変わるときに、モードの振幅をそのまま引き継ぐ扱い
  • 熱の模型の伝導の裾の近似(指数関数 17 個)、弓の毛の側の履歴の忘れ方、弓が離れている間の接触の大きさ(0.05 N のとき)
  • 松脂のむらの相関の長さ(0.5 mm)と標準の大きさ(3 %)
  • 1 標本を分ける刻み(滑りの間を 24 刻み以上、最大 10 刻み)
  • 押さえた E 線の弓圧の下限の目安(0.38 mN)
  • 弦の中ほどの全振幅の目安(振れの包絡を放物線とした近似)
  • 駒: 揺れの共振 3 kHz(当てはめの 2.9 kHz と Reinicke の約 3 kHz から)、駒そのものの減衰比 1 %、上端の曲線の半径 42 mm と弦の向きの傾き
  • 弱音器の質量: ゴム 1 g(約 1 g の実測から)、金属 5 g(Woodhouse の計算例から)
  • シグネチャモードのうち A1 を入れないこと
  • 多数のモードの範囲(760 Hz〜10 kHz)、平均の間隔(55 Hz)と間隔のばらつき(0.6〜1.4 倍)
  • 胴の減衰比の係数(支えなし 0.015、構えたとき 500 Hz で 0.03)
  • 放射効率の傾き(指数 0.9)、大きさの補正(0.6〜3.9 kHz の平均を Bissinger の図に合わせる 0.94 倍)、振動する殻の質量(0.21 kg)
  • 曲の弓: β と弓の速さの範囲(下の表)、vb/β の基準(mf で 0.33 m/s ÷ 0.1)、E 線と G 線の β の倍率 1.3、弓圧を Schelleng の上限の 0.385 倍にすること(試聴で決めた)、重音・和音の下の弦の β を 0.1 以上にすること
  • ひと弾きの形(速さを上げ下げする時間、弓を返す 8 ms・10 ms、弓を離すときに弓圧を抜く 40 ms、弓圧を 0.2 倍より下げないこと、弓を当てる 15 ms・20 ms 前、弦の移り 12 ms)と、ひと弾きごとのばらつき
  • ゆっくりした揺らぎの時定数(0.05・0.3・1.5 s)と大きさ
  • 二重の滑りの見張り: 判定(第 2 倍音が基音より強い)、弓圧を上げる上限(D・G 線で 2 倍)、摩擦曲線へ移るまでの時間(D・G 線 0.25 s、E・A 線 40 ms)、摩擦曲線での弓圧(上限の 0.27 倍)
  • 乱れの見張り: 判定(1 周期前との差の比 0.12)、ならす時定数(15 ms)、弓圧を下げる下限(0.75 倍)と時定数(下げる 50 ms、戻す 0.3 s)
  • 弓の使い方: 弓を離すところ(休み・3 音以上の和音の前・0.3 s 以上のひと弾きで終わる楽句の終わり)、離す時間(音の 1/4、0.04〜0.1 s)、和音を下げ弓で元から 6 cm で始めること、毛の両端の余裕(3 cm)、弓の速さの倍率の範囲(0.7〜1.15)
  • 手で弾くときの毛の長さ(0.65 m)、加速の時間(0.08 s)、返すときの弓圧の弱め方
  • 音の高さを移す時間(スラー 30 ms、弓を返すとき 10 ms、トリル 6 ms)
  • ビブラートの掛け方(遅れ、広げ方、終わりの弱め方、強弱による幅、音ごとのばらつき)と標準の幅(50 セント)
  • 楽譜の解釈: 楽句の長さ、弧の形と大きさ、延びと遅くする割合、ふくらみ、High loud の大きさ、出だしのばらつき(6 ms)
  • 強弱の記号の値(ppp −16、pp −12、p −7、mp −3、mf 0、f +5、ff +9、fff +12、fz・sf・sfz +6 dB)と、次の記号がない松葉の幅(±4 dB)
  • 和音の分け方(下の 2 音から上の 2 音へ、0.11 s)、分散和音の形、トリルの形、G3 より低い音を 1 オクターブ上げること
  • 曲の標準のテンポと強弱の予定(下の表)
  • 部屋の寸法と吸音率
弦β(押さえた音)β(開放弦)弓の速さ
E 線0.12〜0.1350.12〜0.130.22〜0.5 m/s
A 線0.07〜0.10.07〜0.10.22〜0.5 m/s
D 線0.09〜0.110.1〜0.1150.22〜0.5 m/s
G 線0.1〜0.130.115〜0.130.22〜0.5 m/s(開放弦は 0.35 m/s まで)

β の範囲は、揺らぎ・松脂のむら・弓の返しを含めて走査し、どの弓の速さでも乱れにくかった範囲です。

曲標準のテンポ楽句強弱の予定
シャコンヌ BWV 1004♩ = 60(ニ長調の節は 54)4 小節節ごとの折れ線(−7〜+6 dB)
アルマンド BWV 1004♩ = 602 小節0 dB
クーラント BWV 1004♩ = 964 小節+1 dB
サラバンド BWV 1004♩ = 544 小節−1 dB
ジーグ BWV 1004♩ = 992 小節+1 dB
前奏曲 BWV 1006♩ = 1124 小節+2 dB
アダージョ BWV 1001♪ = 482 小節0 dB
グラーヴェ(エクルズ)♪ = 692 小節楽譜の記号
アダージョ(エクルズ)𝅗𝅥 = 422 小節楽譜の記号

楽譜の出典

  • パルティータ 第 2 番 ニ短調 BWV 1004 より 5 楽章 J. S. バッハ「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」

    音符は、Mutopia Project の楽譜(アルマンド・クーラント・サラバンド・ジーグ・シャコンヌ)の LilyPond のファイルから読みました。反復は演奏順に展開し、装飾音は除いています。

    • 入力: アルマンド・クーラント・シャコンヌは Hajo Dezelski。サラバンド・ジーグは Benjamin D. Esham
    • 底本: Bach-Gesellschaft Edition 1879 Band 27.1
    • 楽譜の番号: Mutopia-2010/02/03-1423・Mutopia-2008/05/18-1424・Mutopia-2008/10/29-1427・Mutopia-2008/05/28-1428・Mutopia-2019/05/30-1426
    • 標準のテンポ:
      • アルマンド: ♩ = 60
      • クーラント: ♩ = 96
      • サラバンド: ♩ = 54
      • ジーグ: ♩ = 99
      • シャコンヌ: ♩ = 60(ニ長調の節は 54)
  • パルティータ 第 3 番 ホ長調 BWV 1006 より 前奏曲 J. S. バッハ

    音符は、Mutopia Project の楽譜の LilyPond のファイルから読みました。

    • 入力: Hajo Dezelski
    • 底本: Bach-Gesellschaft Edition 1879 Band 27.1
    • 楽譜の番号: Mutopia-2008/07/13-1469
    • 標準のテンポ: ♩ = 112
  • ソナタ 第 1 番 ト短調 BWV 1001 より アダージョ J. S. バッハ

    音符は、Mutopia Project の楽譜の LilyPond のファイルから読みました。

    • 入力: Hajo Dezelski
    • 底本: Bach-Gesellschaft Edition 1879 Band 27.1
    • 楽譜の番号: Mutopia-2008/06/01-1429
    • 標準のテンポ: ♪ = 48

    バッハの 7 曲の楽譜のライセンスは クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承 3.0(CC BY-SA 3.0)で、元の LilyPond のファイルと、そこから作った音符のデータ(src/tools/violin/scores の bwv1001-1・bwv1004-1〜5・bwv1006-1)も同じライセンスで公開します。

    原典に強弱の記号はありません。強弱の目安(シャコンヌは節ごとの強弱の予定)とテンポは、このツールで決めた仮定です。

  • ソナタ ト短調 より グラーヴェ・アダージョ H. エクルズ(J. Salmon によるヴァイオリンとピアノの編曲、1914 年)

    音符は、Mutopia Project の楽譜の LilyPond のファイルから、ヴァイオリンの声部だけを読みました(ピアノの伴奏は鳴らしません)。強弱の記号と松葉は楽譜のものを使います。

    • 入力: Benjamin Crowell
    • 楽譜の番号: Mutopia-2015/09/01-540
    • ライセンス: パブリックドメイン
    • 標準のテンポ:
      • グラーヴェ: ♪ = 69
      • アダージョ: 𝅗𝅥 = 42

弾く弦、弓の向き、重音と和音の弾き方(3 音以上は下の 2 音から上の 2 音へ分けて弾く)、トリルの形は、このツールが楽譜から決めています。

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