ヴァイオリン音響モデル
弓と弦の摩擦(接触の温度で変わる松脂の摩擦)、ねじれも含む弦の振動、駒とつながった胴(シグネチャモードと多数の高いモード)を計算して、ヴァイオリンの音を作ります。弦を押すと、その位置を押さえて弓で弾き続けます。弓の速さ・弓圧・駒からの距離を変えると、弦の振れ方と音がすぐに変わります。弓の傾きで弾く弦(重音を含む 7 段)を選び、曲の演奏もできます。
ヴァイオリン
駒の側から弓の傾き(7 段)
弓の状態帯はよく鳴る範囲
弦の変位を何倍にして描くか。×1 は実際の大きさ(弦の間隔は実際の大きさで描く)
振動を何分の 1 の速さで描くか
著作権の切れた無伴奏の曲。弦・弓の向き・重音や和音の弾き方は、このツールが楽譜から決める
楽譜どおり: 決めたテンポと強弱の目安だけで弾く。楽句の弧と揺らぎ: 楽句の中ほどで少し速く大きく、終わりで延ばし、長い音をふくらませ、弓の出だしを少しばらつかせる
曲の標準の速さに対する割合。演奏中も変えられる
曲で弦に掛ける弓圧の、標準(弦ごとに Schelleng の上限の約 0.39 倍)に対する割合。演奏中も変えられる。小さすぎるとかすれた音、大きすぎるとつぶれた音になる
スピーカーへ出す大きさ(0 dB で、1 m 先の音圧 1 Pa をフルスケールにする)
弓の傾きで、触れる弦が決まる。隣の 2 本に同時に触れると重音になる
弓を動かす速さ。速いほど振れが大きく、大きな音になる。弓圧の上限も速さに比例して上がる
弓を弦に押し付ける力(重音のときは 2 本の弦の和)。弱すぎると笛のようなかすれた音、強すぎるとつぶれた音になる
弓が触れる位置の、駒からの距離 ÷ 振動する長さ。駒に近いほど高い倍音が強い硬い音で、強い弓圧が要る
- 弓圧の上限 Fmax
- 弓圧の下限 Fmin
- 駒から弓まで xb
- 1 周期の滑りの割合
弓の速さ・弓圧・駒からの距離に足す、ゆっくりした揺らぎの大きさ(人の手の揺れ)
弓の毛の上の、摩擦係数のむら(標準偏差)。音の細かなざらつきになる
押さえた弦の音の高さを揺らす。開放弦には掛からない
音の高さを揺らす幅(上下の全幅)。曲では、長い音にだけ、音の出だしから少し遅れて掛ける
1 秒あたりに揺らす回数
開放弦の音の高さを、平均律(A4 = 440 Hz)からずらす(糸巻きで張力を変えるのと同じ)。押さえた音も同じだけずれる。弓で弾くと、弓圧が強いほど音は少し低くなる
開放弦の音の高さを、平均律(A4 = 440 Hz)からずらす(糸巻きで張力を変えるのと同じ)。押さえた音も同じだけずれる。弓で弾くと、弓圧が強いほど音は少し低くなる
開放弦の音の高さを、平均律(A4 = 440 Hz)からずらす(糸巻きで張力を変えるのと同じ)。押さえた音も同じだけずれる。弓で弾くと、弓圧が強いほど音は少し低くなる
開放弦の音の高さを、平均律(A4 = 440 Hz)からずらす(糸巻きで張力を変えるのと同じ)。押さえた音も同じだけずれる。弓で弾くと、弓圧が強いほど音は少し低くなる
- G 線の開放 f1
- D 線の開放 f1
- A 線の開放 f1
- E 線の開放 f1
駒の上端に載せる重り。駒の揺れの共振を下げ、高い音を弱める(ゴムは約 1 g、金属は 5 g とした)
760 Hz より上の胴の多数のモード(周波数と大きさがばらつく)を作る乱数を変える。それより下のシグネチャモードはどの個体も同じ
- 空気の共振 A0
- 胴の曲げ CBR
- 板の共振 B1−
- 板の共振 B1+
- 駒の揺れ
- 駒の上下
響きを付ける部屋。寸法と吸音率から残響時間を求める(再生の音だけに付け、音の波形と計算結果には含めない)
楽器から聴く人までの距離。遠いほど、直接届く音に対して部屋の響きが大きくなる(全体の大きさは 1 m 先の直接音にそろえる)
- 残響時間 T60(500 Hz)
- 残響時間 T60(4 kHz)
- 臨界距離 rc
- 残響音 ÷ 直接音
音の波形
直前の音の長さ
スペクトラムの右端の周波数
計算結果
弓が触れている弦(いちばん高い弦)
- 第 1 部分音 f1
- 振動する長さ L
- 張力 T
- 線密度 μ
- 波の速さ c
- 特性インピーダンス Z0
- 駒の力の振幅 Z0vb/β
- 弦の中ほどの全振幅
動作原理と式
音の流れ
弓で擦られた弦は、弓に付いて一緒に動く「固着」と、弓から外れて戻る「滑り」を周期的に繰り返します。これが Helmholtz の運動です。弦の振動は駒を揺らし、駒が胴を揺らし、胴が空気へ音を出します。
- 弓速さ・弓圧・駒からの距離
- 摩擦固着と滑り
- 弦横振動とねじりのモード
- 駒揺れと上下の動き
- 胴シグネチャモードと多数のモード
- 放射1 m 先の音圧
- 残響再生の音だけ
弓と弦の摩擦は、音の標本ごとに解きます。高い音では、1 標本をさらに細かい刻みに分けます。4 本の弦は別々に計算し、駒の上で力を足して胴へ入れます。
弦
弦は、両端で支えた曲げ剛性のある弦として扱います[1]。両端は駒と、押さえた指(開放弦では上駒)です。開放弦の振動する長さは 328 mm です[2]。押さえた音では、音の高さに合わせて短くします。
- 張力
- 線密度
- 振動する長さ(開放弦で )
- 開放弦から押さえた音までの半音の数
- 曲げ剛性
- 非調和性係数
- 横波の速さ
- 特性インピーダンス
曲げ剛性があると、高いモードほど周波数が整数倍より少し高くなります。線密度は、開放弦の第 1 部分音が平均律(A4 = 440 Hz)の音の高さに合うように、張力から求めます。計算結果の第 1 部分音 は、曲げ剛性を除いた値です。
入力の「調弦」で、弦ごとに開放弦の音の高さを平均律からずらせます(±100 セント)。糸巻きを回すのと同じく張力を変え、線密度は変えません。ずらす量を セントとすると、張力は 倍、特性インピーダンスは 倍になり、押さえた音も同じだけずれます。弓で弾いた音は、弓圧が強いほど第 1 部分音より低くなります。この模型で開放弦を弓速 0.3 m/s・ 0.1 で弾くと、弓圧 0.3 N で 3〜5 セント、0.8 N で 6〜22 セント(E 線がいちばん大きい)低くなります。チューナーで合わせるときは、弾くときの弓で鳴らしながら合わせます。
弦の値
- 張力と外径: Pickering が測った合成芯の巻線弦(Dominant)の値[3]。E 線は、線密度の合うスチールの単線
- E 線の曲げ剛性: Galluzzo らの値[4]
- 巻線の 3 本の曲げ剛性: Desvages の表の弦の半径とヤング率から、芯の半径を弦の半径の半分として求めた値[5]。曲げ剛性は芯で決まるとする
| 弦 | 開放弦 | 張力 | 外径 | 曲げ剛性( N·m²) |
|---|---|---|---|---|
| E 線 | E5 | 72.56 N | 0.25 mm | 4.7 |
| A 線 | A4 | 56.25 N | 0.676 mm | 0.8 |
| D 線 | D4 | 43.72 N | 0.795 mm | 0.85 |
| G 線 | G3 | 44.57 N | 0.803 mm | 0.8 |
弦の損失
弦が自分で失うエネルギーは、損失係数 で表します。振幅は で減ります。 は、Woodhouse の式の形[6]に、空気の粘性による損失(Valette)[7]と押さえた指の損失を足したものです。
- 空気の粘性による損失。 は外径、 と は空気の粘性率と密度
- 低い周波数で増える損失
- 張力の側の内部摩擦 と、曲げの側の粘弾性
- 押さえた指の損失 (開放弦では 0)
と は、E 線が Galluzzo らの測定[4]、巻線の 3 本が Mansour らのチェロ弦の測定[8]の値です。高い倍音ほど、曲げの損失で早く消えます。
Schoonderwaldt らが撥弦の減衰から求めた D 線の基本モードの Q は、楽器の上の開放弦で 410、モノコードで 480 です。剛な台の上では、その約 2 倍になるとされます[9]。 は、剛な台の上での基本モードの Q が約 900 になる値にしました。
押さえた指の損失は、弦の端に置いた抵抗で波が反射するときの損失とみなし、高いモードほど で小さくします。弦が駒から胴へ失う損失の式[10]の に、端の抵抗の逆数を入れた形です。
ねじり
弓は弦の表面に触れるので、弦がねじれて表面が動く分も、弓の位置の速度に入ります。ねじりは両端を固定した調和なモードで表し、Q はどのモードも同じとします[11]。
- ねじり波の速さ
- 弦の表面で見たねじりのインピーダンス
- ねじりのモードの Q
- 表面の速度で見たモードの質量
- E 線: Galluzzo らの測定(基本 4.6 kHz、0.61 kg/s、Q 30)[4]。横波に対して速さ 7 倍、インピーダンス 3.6 倍
- 巻線の 3 本: 速さは横波の 5.5 倍(合成芯の目安 5〜6 倍[12])、インピーダンスは 2.5 倍(目安 2〜4 倍[9])、Q 20
巻線の Q は、Woodhouse・Loach がチェロの D 線で測った値(ナイロン芯 46、スチール芯 34、ガット芯 20)の下の端です[11]。Q を 35 にすると、D 線と G 線の和音や重音で多重の滑りが残りやすくなりました。弓の毛の弾性など、模型にない仕組みの分をここで受け持っているとみなします。
駒での結合
弦は駒で胴につながっています。駒のアドミタンス (力に対する速度)があると、弦のモードの複素角周波数は、1 次の摂動として下の式のように移ります[13]。 は駒の上端の、その弦を弓で擦る向きの値です。実部が大きい周波数ほど、エネルギーが胴へ逃げて早く減衰します。
弦どうしの駒を通じた結合は入れていません。弓で擦っていない弦は、前に擦った余韻のほかは鳴りません。
弓と弦の摩擦
弦の横の変位をモードの和で表し、弓の位置 に摩擦力 が働くとします。弓は弦に 1 点で触れるとします。駒にかかる力は、各モードの駒での傾きの和です。
- 第 モードの振幅
- モードの質量
- 駒との結合を含む角周波数と減衰率
- 駒から弓までの距離
- 弓の速さ
- 弓圧
- 弓の位置の弦の表面の速度
- ねじりによる表面の速度
1 刻みの解き方
力を 1 刻みの間で一定とすると、モードは複素指数で厳密に進められます。すると、次の刻みの弓の位置の速度は、力がないときの速度 に、力に比例する分を足したものになります。この直線と摩擦の特性との交点で、その刻みの と が決まります。Friedlander の作図を使う、McIntyre・Schumacher・Woodhouse の方法です[14]。
- モードを進める力がないとして
- 弓の位置の速度
- 交点直線と摩擦の特性
- 力を加えるモードと温度を更新
- 駒の力胴へ
は刻みの長さです。前の和は横振動、後の和はねじりのモードについてとります。
摩擦曲線
松脂の摩擦係数を、滑りの速さ の関数とする模型です。定常の滑りの測定に当てはめた曲線を使います[15][16]。止まっているときの摩擦係数は です。
- 固着: 弓と同じ速さで動くのに要る力が 以下なら、弦は弓に付いて動く(上の不等式)
- 滑り: 直線と の交点
- 交点が 3 つあるとき: いまいる枝(固着か、同じ向きの滑り)に留まれる限り留まる(履歴の規則)[14]
このツールでは、摩擦曲線は曲の中で二重の滑りが続いた音にだけ使います(「弓の動かし方」の節)。
熱の模型
ふだんは Woodhouse の熱の模型を使います[17]。摩擦係数を、滑りの速さではなく、接触部の温度の関数とする模型です。松脂は滑りの熱で温まって柔らかくなり、摩擦が下がります。 は、定常の滑りの測定を温度の関数に直した Woodhouse の図を、2.5 K ごとに読んだ値です。1.2 から 0.35 まで下がります。
滑っている間の力は限界の値 のままなので、交点は常に 1 つに決まり、履歴の規則は要りません[17]。
- 接触部の温度の、周りからの上昇
- 接触の半径(1 N のとき = 250 µm)
- 変形する層の厚さ(1 µm)
- 松脂の密度と比熱
- 弦・弓の毛の熱伝導率・密度・比熱
- 伝導の核(弦の側と弓の毛の側の和)
左辺は摩擦の発熱です。右辺は順に、両側の固体(弦と弓の毛)への伝導、流れ込む松脂が運ぶ熱、接触部にたまる熱です[15][17]。伝導の核は半無限の固体の式を刻みで離散化したもので、温度の履歴を畳み込みます。値は Woodhouse の表のものです[17]。
- 伝導の核: 直近の 6 刻みは上の式のまま計算し、それより古い部分は裾を指数関数 17 個(時定数 20 µs〜4 s)の和で近似する
- 弓の毛の側: 滑ると新しい毛が入るので、滑った距離 で温度の履歴を忘れる(Smith・Woodhouse の打ち切り[15]を指数関数の形にしたもの)
- 弓が離れている間: 接触の大きさを 0.05 N のときで代え、接触部を冷やし続ける
松脂のむら
弓で擦った音の周期の揺れは、主に弓の毛の上の松脂のむらなど、外から加わる不規則さによるとされます[18]。そこで、弓圧(摩擦の限界)に小さな乱数を掛けます。乱数は毛の上の位置で決まるとし、弓が = 0.5 mm 進むと入れ替わるように、弓の速さに応じた 1 次の低域通過に通します。大きさ (標準偏差)は入力の「松脂のむら」で選びます。
は分散 1 の一様乱数です。
計算の刻み
高い音では、滑りの時間(周期の約 倍)が数標本しかなく、固着と滑りの切り替わりを追えません。そこで、滑りの間が 24 刻み以上になるように、1 標本を 刻み(最大 10)に分けます。熱の模型は、20 µs の刻みで十分に収束するとされます[17]。
弓圧の範囲と弦の振れ
Helmholtz の運動では、弓の位置の弦は 1 周期のうち の間は弓と同じ速さで固着し、 の間だけ逆向きに滑ります[19]。計算結果の「1 周期の滑りの割合」は です。
弓圧が強すぎると、固着を保てずに音がつぶれます。弱すぎると、1 周期に何度も滑ります。弓の枠の上限と下限は、次の式で求めます。
- 弓圧の上限(Schelleng の式)
- 弓圧の下限の目安
- 止まっているときと速く滑るときの摩擦係数の差。この模型では 1.2 − 0.35 = 0.85
- 測った
上限は Schelleng の式で[19]、ヴァイオリンの弦の実測とよく合います[9]。下限は、Schelleng の式では実測の 1/6〜1/11 にしかならず、実測は弓の速さにもよりません[9]。そこで下限は、Schoonderwaldt らが測った を で割った値を目安にします。
| 条件 | 使う弦 | |
|---|---|---|
| D 線の開放弦 | 0.69 mN | A・D・G 線の開放弦 |
| D 線の押さえた音 | 1.56 mN | A・D・G 線の押さえた音 |
| E 線(モノコード) | 0.17 mN | E 線の開放弦 |
押さえた E 線の測定はないので、E 線の値に、D 線の押さえた音と開放弦の比(約 2.3)を掛けた 0.38 mN を使います。
駒の力と弦の振れ
理想の Helmholtz の運動では、駒にかかる力はのこぎり波で、跳びの大きさは です[19]。計算結果の「駒の力の振幅」はその半分です。
弓の位置の弦の全振幅は、弓が固着している間に進む距離です[9]。振れの包絡を両端を結ぶ放物線とすると、弦の中ほどの全振幅が求まります。
計算結果の「弦の中ほどの全振幅」は、計算した駒の力の山を右の式に入れた値で、図の弦の振れにも使います。下の小さな字は、弓の速さと から求めた理想の値です。
駒
駒は、Woodhouse の 2 つの模型を合わせたものです[20]。
- 揺れ: 駒の上部(慣性モーメント )が、ねじりのばね を介して 2 本の足を逆向きに押す
- 上下の動き: 質量 が、ばね を介して 2 本の足を同じ向きに押す
- 揺れの回転の中心から上端までの長さ(19.5 mm)
- 足の間隔(30 mm)
- 足の位置の胴のアドミタンス(1 = 低音側、2 = 高音側)
- 表板の回転のアドミタンス
- 揺れによる駒の上端の水平のアドミタンス
足を固定したときの共振は、揺れが約 3 kHz、上下が約 6 kHz です(Reinicke の測定)[21]。慣性モーメントは Woodhouse が測定に当てはめた kg·m² です[20]。上下の質量 1.5 g は、Woodhouse の図の 7 kHz より上の垂直のアドミタンスから求めました[20]。
胴が動くと、揺れの共振は 2〜3 kHz の幅の広い山(bridge hill)になります[20]。上下の動きも同じ形の式で表せます。
このツールは上の式をそのまま使いません。胴のモードに駒の揺れと上下の動きを 1 つずつ足し、ばねでつないだ系の固有モードを先に求めます。音を作る側は、これを独立な共振器の和として回します。
弦の向き
駒の上端は曲線(半径 42 mm)なので、4 本の弦を擦る向きは少しずつ傾いています。弓の向きの力を、水平(E 線を擦る向き)と垂直の成分に分けて駒に入れます。
- E 線: 水平から 24.3°
- A 線: 7.9°
- D 線: −7.9°
- G 線: −24.3°
弱音器
弱音器は、駒の上端に載せる質量 として扱います。ねじりのばねは変えずに慣性モーメントを増やし、上下の動きの質量にも同じだけ足します[20]。足を固定したときの共振は次の値に下がり、計算結果の「駒の揺れ」「駒の上下」に出ます。
ゴムの弱音器は約 1 g の実測[22]、金属の弱音器は Woodhouse の 5 g の計算例[20]に合わせました。
胴
胴は振動モードの和で表します。2 点 ・ の間のアドミタンスは次の式です[23]。 は質量で正規化したモードの形です。
シグネチャモード
600 Hz より下には、どのヴァイオリンにもある 4 つのシグネチャモードを置きます。周波数は、Bissinger が測った 17 挺の平均です[24]。
| モード | 周波数 | 減衰比(支えなし) | 減衰比(構えたとき) | アドミタンスの山 | 放射の山 |
|---|---|---|---|---|---|
| A0 | 275 Hz | 2.5 % | 2.39 % | −30 dB | 和の規則 |
| CBR | 407 Hz | 1.29 % | 2.0 % | −22 dB | 0 |
| B1− | 475 Hz | 1.22 % | 1.99 % | −15.5 dB | 1.01 Pa/N |
| B1+ | 541 Hz | 1.15 % | 3.99 % | −14.5 dB | 0.95 Pa/N |
- 支えなしの減衰比と放射の山: Bissinger の 14 挺の平均[25]。放射の山は 1.2 m の球面で平均した音圧 ÷ 力
- 構えたときの減衰比: Marshall の測定(Bissinger の引用)[26]
- アドミタンスの山: 駒の上端の水平のアドミタンス(1 s/kg を 0 dB)。Woodhouse の図から読んだ値[21]
CBR は表板と裏板がほぼ同じ向きに動き、体積の変化が小さいので、ほとんど音を出しません[25]。A0 は胴の空気の共振で、駒のアドミタンスには小さな山しか出ませんが、音は強く出ます[21]。
低い周波数では、駒は剛体として揺れます。そこで、表の山の高さから、2 本の足の動きの差 と、モードの体積の変化 を決めます。高音側の足(魂柱の近く)の動きは、低音側の 0.25 倍としました(Woodhouse の図から読んだ目安)[20]。
= 1.2 m は音圧を求める距離です。A0 の体積の変化は、周波数 0 で胴の体積の変化の和が 0 になる条件(3 つ目の式)から決めます。f 孔の空気の出入りが、胴の体積の変化を打ち消すためです。Weinreich の和の規則です[27]。
多数のモード
760 Hz から 10 kHz には、乱数で多数のモードを置きます。ギターの「統計的なギター」と同じ方法です[6]。モードの平均の間隔 は 55 Hz で、Weinreich の見積り 44 Hz[28]と Bissinger が数えた値[25]の間にとりました。間隔は 0.6〜1.4 倍の範囲でばらつかせます。
足の位置のモードの形は、平均のアドミタンスに合う正規分布の乱数です。1 つのモードの を周波数で積分すると なので、間隔 で並ぶモードの平均の実部は になります。2 本の足の平均のアドミタンス [s/kg] は、Woodhouse の図から読んだ傾きです[20]( は Hz)。
乱数の種は入力の「個体」で選びます。同じ種なら同じ胴になります。
減衰
支えなしの減衰比は、1.5 kHz までは Q ≈ 33 です。典型的な胴のモードの Q は 25〜50 です[27]。その上は で減らします[25]。モードの重なりは 1〜2 kHz で 1 を超え、Woodhouse の記述に合います[23]。
奏者が構えると、低い周波数ほど減衰が増えます。増え方は にします[26]。入力の「支えなし」「構えたとき」で選びます。
胴の枠の計算結果のシグネチャモードの周波数は、駒とつなぐ前の値です。
放射
音圧は、Bissinger が放射を測った球面の半径と同じ 1.2 m 先で求めます[24]。
- シグネチャモード: 体積の変化による単極子。どの向きにも同じ
- 多数のモード: 放射効率 に合う大きさの正規分布の乱数。向きの違う 2 点で別の乱数にし、左右の出力に使う
- モードの変位
- 空気の密度と音速
- 放射する面の面積(0.13 m²)[25]
- 振動する殻の質量(0.21 kg)。楽器の 400〜450 g のうち表板・横板・裏板が半分という目安から[29]
- 実効的な臨界周波数(3.9 kHz、14 挺の平均)[24]
2 つ目の式は、Bissinger の放射効率の定義(球面で平均した音圧の 2 乗と、表面で平均した速度の 2 乗の比)を、モード 1 つに当てはめたものです[25]。臨界周波数より下の傾きは、Bissinger の帯域の平均の比(音圧 ÷ 力と速度 ÷ 力の比)が 625 Hz から 3.9 kHz で約 2 倍になることに合わせました[24]。平板の式の よりゆるやかです。
胴の枠の図は、駒の上端の水平のアドミタンスと、1.2 m 先の音圧 ÷ 力(左右の 2 点の 2 乗平均)です。
弓の動かし方
手で弾く
手で弾くときは、弓の速さ ・弓圧 ・駒からの距離 を入力の値にします。
- 弓は 0.08 s で入力の速さまで加速し、毛(0.65 m)の端の手前で返す
- 2 本の弦に触れるときは、弓圧を半分ずつ受け持つ
- 弓が遅くなる間(返すとき)は、弓圧を弱める
- 揺らぎは、曲を弾くときの半分の大きさで足す
曲を弾く
楽譜の音は、弓を返す音ごとに「ひと弾き」にまとめます。スラーのない音ごとに弓を返し、最初は下げ弓です[30]。同時に始まる音(重音・和音)は同じひと弾きです。
音量はほぼ で決まり、10 倍で 20 dB 上がります[31]。そこで、強弱の目安 (mf を 0 dB)から を決め、その増え方を と に半分ずつ分けます。弓圧は、弓が触れている弦ごとに、その弦の と から Schelleng の上限の 0.385 倍にします。初めは 0.7 倍でしたが、試聴でその 55 % にしたときに、長い曲を通して雑音が気にならなくなりました。演奏の枠の「弓圧」で、この倍率をさらに 40〜200 % に変えられます。重音・和音では弦ごとに決めるので、弓圧の合計は 1 本のときのおよそ 2 倍になります。
- : 弓が触れているいちばん高い弦で決め、弦ごとの範囲に収める。 は E 線と G 線で 1.3、A 線と D 線で 1
- : 0.22〜0.5 m/s に収め、「弓の使い方」で決めたひと弾きごとの倍率を掛ける
- ほかの弦の : 同じ から、その弦の範囲に収める。重音・和音の下の弦は 0.1 より小さくしない(強く鳴らしすぎると多重の滑りに落ちやすい)
ひと弾きの形
- 弓を当てて始めるとき: 15 ms 前から弦に弓を当て、弓の速さを 0.08 s(E 線)または 0.12 s(ほかの弦)で上げる
- 弓を弦に付けたまま返すとき: 弓の速さを 8 ms で下げ、10 ms で上げる(音の落ち込みは ±40 ms の平均で −1〜−2 dB)
- 弓を離すとき: 弓を動かしたまま、終わりの 40 ms で弓圧を抜いて弦から離す(弦は鳴り残る)
- 弓圧: 速さを上げ下げする間も、0.2 倍より下げない
- 前の音が終わっている音: 20 ms 前から弓が触れる
- スラーで弦を移る音: 12 ms かけて、弓が触れる弦を移る
- ひと弾きごとのばらつき: 弓圧 8 %、速さを上げる時間 15 %、速さ 5 %(標準偏差)
弓の速さ・弓圧・ には、ゆっくりした揺らぎ(人の手の揺れ)を足します。時定数 0.05・0.3・1.5 s の 3 つの Ornstein–Uhlenbeck 過程の和で、相対の標準偏差は弓の速さ 4 %、弓圧 6 %、 5 % です。入力の「揺らぎ」で 0〜2 倍にします。
弓の使い方
弓の毛は 0.65 m しかありません。奏者は、弓の端で音が途切れないように、弓をどこからどれだけ使うかを前もって考えます(弓の配分)。このツールも、曲を始めるときに全部のひと弾きの弓の使い方を決めます。図の弓の位置はこの計画に従って動き、弓が弦から離れている間は浮かせて薄く描きます。
- 弓を離すところ休み・和音の前・楽句の終わり
- 長すぎるひと弾きを分ける途中で弓を返す
- 弓の向き交互。和音は下げ弓
- 弓の位置と速さの倍率毛の長さに収める
- 弓を離すところ: 前の音との間が空くところ(休み)、3 音以上の和音の前、0.3 s 以上のひと弾きで終わる楽句の終わり。間が空いていなければ、前の音の終わりを音の長さの 1/4(0.04〜0.1 s)縮めて、弓を離して動かす時間を作る。離している間に、次のひと弾きを始める位置へ弓を動かす
- 弓を離して始める和音は下げ弓にし、元の近く(毛の元から 6 cm)から弾く。続けて下げ弓になるときは、弓を元へ戻す
- 弓の速さを 0.7 倍にしても毛の長さに収まらない長い音や長いスラーは、奏者と同じく弓を遅くして、1 回の弓で弾き切る。弓の速さは 0.08 m/s まで落とし、β の下限を 0.6 倍まで下げる(弓を駒へ寄せる)。弓圧も弓の速さ ÷ β に比例して下がるので、音は小さくなる。シャコンヌの最後の音(5.45 s)では、弓を返して弾いたときより約 9.5 dB 小さい。それでも収まらない音(アダージョ BWV 1001 の最後の和音、16.6 s)は、途中で弓を返す(音の境目が近くにあればそこで)
- 弓を離さずに続くひと弾きの列は、毛の両端に 3 cm ずつ余裕を残して収める。後ろのひと弾きから順に、始められる位置の範囲を求め、前から、弓の速さの倍率(0.7〜1.15、ただし乱れにくい弓の速さの範囲の内)が 1 に近くなる長さを選ぶ。弓を離したあとは、ひと弾きが弓の中ほどに来る位置から始める
- どうしても収まらないところでは、そこで弓を離して位置を直す
二重の滑りの見張り
熱の模型でも、D 線と G 線の和音や重音では、1 周期に 2 回滑る二重の滑りに落ちることがあります。二重の滑りでは、駒の力の第 2 倍音が基音より強くなります。そこで曲を弾く間は、駒の力の基音と第 2 倍音を時定数 30 ms でならして追い、次の条件がそろう時間を数えます。
- 弓が 0.11 m/s 以上で動いている
- 音の始まりと、弓を返したときから 80 ms 以上たっている
- 第 2 倍音が基音より強い
- 弓圧を上げるD・G 線。最大 2 倍
- 摩擦曲線へ移る続いたら、その音の残り
- 熱の模型へ戻すその弦の次の音で
条件が 0.25 s(D・G 線)または 40 ms(E・A 線)続いたら、その音の残りを摩擦曲線の模型で鳴らします。このツールの値では、摩擦曲線のほうが二重の滑りに落ちにくかったためです。摩擦曲線では、弓圧を Schelleng の上限の 0.27 倍にします(上げた倍率は掛けません。掛けると上限に近づき、音が割れます)。
乱れの見張り
弓圧が Schelleng の上限に近いと、弦の動きが周期的でなくなり、ざらついた音になります(乱れた運動)。奏者は耳で聞いて弓圧を緩めます。このツールでは、弦ごとに駒の力を 1 周期前の値と比べ、差の 2 乗の平均と 2 乗の平均を時定数 15 ms でならして追います。
は弦の周期です。音の始まりと弓を返したときから 60 ms より後に(返すと駒の力の向きが逆になり、1 周期前との差が大きく出るため)、この比が 0.12(−9 dB)を超えている間は、弓圧の倍率を時定数 50 ms で 0.75 倍まで下げ、収まったら 0.3 s で戻します。乱れている間は、二重の滑りとは数えません。
左手
押さえる音が変わると、弦の振動する長さに合わせてモードの周波数・減衰・形を作り直します。各モードの振幅はそのまま引き継ぎます。弦の長さと は 32 標本ごとに入れ替えます。
音の高さは、スラーで同じ弦の音へ移るときは 30 ms、弓を返すときは 10 ms かけて移します。
ビブラートは、押さえた弦の振動する長さを正弦波で揺らします。開放弦には掛けません。標準の速さ 5.9 Hz は、Mellody・Wakefield が測った平均です[32]。幅 は上下の全幅で、標準は 50 セントです。
曲では、いちばん高い音の流れでビブラートを決め、押さえている弦すべてに同じだけ掛けます(左手は 1 つ)。
- 掛ける音: 0.3 s 以上の音だけ
- 始め: 音の出だしから 0.08〜0.18 s 遅れて、0.3 s かけて幅を広げる。速さは出だしの 0.88 倍から上げる
- 終わり: 幅を 0.35 倍まで、速さを 0.88 倍まで下げる。スラーで続く音へは幅を 0.65 倍までしか下げずにつなぐ
- 長い音: 速さを 2 s かけて 5 % 上げる
- 強弱: 幅を 倍にする
- 音ごとのばらつき: 速さ 4 %(標準偏差)、幅 0.9〜1.1 倍
楽譜から音符へ
曲は、声部ごとの楽譜の音を、弦ごとの音符の列と強弱の曲線に直してから弾きます。
時刻
全声部の音の出だしを「出来事」とします。出来事ごとの長さに次の倍率を掛けて秒にします。KTH の演奏規則の Phrase arch・Punctuation・Final ritardando にあたります[33]。楽句は、曲ごとに決めた小節数で区切ります。
- 楽句の弧: 楽句の中ほどで速く、両端で遅く(±3 %)
- 楽句の最後の出来事: 7 % 延ばす
- 節の終わり(シャコンヌ): 直前の 3 拍を最大 15 % 遅く
- 曲の終わり: 最後の 2 拍を最大 25 % 遅く
- フェルマータ: 1.6 倍
は楽句の中の位置(0〜1)で、弧 は 0.65 の位置で最大になります。
強弱
強弱の目安 は、予定の折れ線に、楽句の弧、0.8 s 以上の音の中のふくらみ、音の高さによる分を足したものです。高い音ほど大きくする分は High loud の規則にあたります[33]。
は音の中の位置(0〜1)、 はいちばん高い音の高さ(半音)、 は曲のいちばん高い音の流れの中央値です。 は ±3 dB までにします。
バッハの曲は原典に強弱の記号がないので、予定はこのツールで決めた仮定です。エクルズの曲は、楽譜の強弱の記号と松葉を使います。記号のところで 0.25 拍かけて段を移り、松葉は次の記号まで直線で移ります。
入力の表情で「楽譜どおり」を選ぶと、楽句の弧・延び・ふくらみ・音の高さによる分・出だしのばらつきを外し、強弱は予定の最初の値だけにします。エクルズの曲は楽譜の記号のままです。
弦と重音・和音
- 単音: 開放弦より上で最も高い弦(低いポジション)[30]
- G 線の開放弦(G3)より低い音: 1 オクターブ上げる(アダージョ BWV 1001 の楽譜に 1 音ある)
- 2 音の重なり: 隣り合う弦の重音(弓はまっすぐなので、間の弦をとばした 2 本は同時に弾けない)。隣り合う弦に置けなければ高い音だけ。押さえる指の幅は 6 半音まで
- 3〜4 音の和音: 下の 2 音を弾いてから上の 2 音へ移る(3 音では真ん中の音を続ける)。下の部分は 0.11 s(出来事の 0.35 倍まで)
- 0.2 s より短い出来事の和音: 上の 2 音だけ
- 弾けない和音: いちばん高い音を残して 1 音ずつ外す
- 上の音が先に終わり、下の音の楽譜の長さが 0.12 s 以上残る和音: 同じ弓のまま下の音へ戻る(内声の旋律)
- 弓を返す出来事: 続いている音も弾き直す
- 間の弦をとばして移る(D 線から E 線など): 前の弦から弓が離れきってから次の弦に触れる。前の音の終わりを約 20 ms 詰め(音の半分まで)、足りなければ次の音の触れ始めを遅らせる
和音を 2 つの重音に分けて続けて弾く形は標準的な弾き方で、Demoucron・Rasamimanana の実装では下の重音から上の重音へ約 100 ms で移ります[34]。
シャコンヌの分散和音
シャコンヌの 89〜120 小節と 201〜207 小節(楽譜に arpeggio とある区間)では、8 分音符ごとに、鳴っている和音を 32 分音符 4 つに分けて弾きます。順は中・低・高・低で、楽譜に書き出された最初の形と同じです。2 音ずつスラーにします。4 音の和音では、中の音を 8 分音符ごとに入れ替えます。
トリル
- 掛ける音: いちばん高い音で、0.15 s より長い音だけ
- 始め: 調号に合わせた上の隣の音から
- 速さ: 1 秒に 6.5 音から 12 音へ上げ、終わりで 9.5 音へ少し落とす
- 長さ: 音の 8 割をトリルにし、残りは元の音を半分の幅のビブラートで延ばす
出だしのばらつき
弓を返す出来事の出だしを、標準偏差 6 ms(±20 ms まで)でずらします。Noise の規則にあたります[33]。
残響
部屋の残響時間を Eyring の式で求め[35]、16 本の遅延線のフィードバック遅延網で残響を作ります[36]。ギターのページと同じものです。
- 部屋の容積
- 部屋の表面積
- 平均吸音率
- 空気の吸収。ISO 9613-1 の値[37]
- 等価吸音面積
- 臨界距離。 から求める
- 聴く位置
1 m 先の直接音に対する残響音の大きさは、臨界距離 で決まります。聴く位置 での比は です。全体の大きさは、直接音と残響音のエネルギーの和が 1 m 先の直接音と同じになるようにそろえます。
計算の範囲と出力
- 音: 1 m 先の音圧。1.2 m 先で求めた音圧を 1.2 倍して直す。音量 0 dB のとき、1 Pa を出力のフルスケールとする
- 弦の横振動のモード: 21.6 kHz(またはサンプリング周波数の 0.45 倍)まで、最大 128 個
- 弦のねじりのモード: 同じ周波数まで、最大 40 個
- 胴のモード: シグネチャモード 4 個、760 Hz〜10 kHz の多数のモード、駒の揺れと上下の動き
スピーカーから出す音は、多数のモードの放射を向きの違う 2 点で求めて左右に分けたステレオです。シグネチャモードの音は左右で同じです。残響と、フルスケールを超えそうなときだけ働くリミッタは、再生の音だけに付けます。計算結果と音の波形は左右の平均で、残響を含みません。
出典
- 硬い弦の周波数N. H. Fletcher, “Normal vibration frequencies of a stiff piano string,” J. Acoust. Soc. Am., vol. 36, no. 1, pp. 203–209, 1964
- 開放弦の振動する長さ(32.8 cm)K. Guettler, “Some typical properties of bowed strings,” knutsacoustics.com/files/Typical-string-properties.pdf
- Pickering が測った Dominant の張力と外径(この資料の引用による)S. Serafin, “Impact of String Stiffness on Virtual Bowed Strings,” CCRMA, ccrma.stanford.edu/~jos/stiffbowed/Modeling_stiffness_string.html
- E 線の曲げ剛性・損失係数・ねじりの測定P. M. Galluzzo, J. Woodhouse and H. Mansour, “Assessing friction laws for simulating bowed-string motion,” Acta Acustica united with Acustica, vol. 103, pp. 1080–1099, 2017
- 巻線の弦の半径とヤング率、芯の半径を弦の半分とする扱いC. Desvages, “Physical modelling of the bowed string and applications to sound synthesis,” PhD thesis, University of Edinburgh, 2018
- 弦の損失の式の形、統計的なモード(統計的なギター)J. Woodhouse, “On the synthesis of guitar plucks,” Acta Acustica united with Acustica, vol. 90, pp. 928–944, 2004
- 弦の損失、空気の粘性C. Valette, “The mechanics of vibrating strings,” in Mechanics of Musical Instruments, Springer, 1995, pp. 115–183
- 巻線の弦の損失係数(チェロ弦の測定)H. Mansour, J. Woodhouse and G. P. Scavone, “Enhanced wave-based modelling of musical strings. Part 1: plucked strings,” Acta Acustica united with Acustica, vol. 102, pp. 1082–1093, 2016
- 弦の基本モードの Q、ねじりのインピーダンスの目安、弓圧の上限と下限の測定、弓の位置の弦の振れE. Schoonderwaldt, K. Guettler and A. Askenfelt, “An empirical investigation of bow-force limits in the Schelleng diagram,” Acta Acustica united with Acustica, vol. 94, no. 4, pp. 604–622, 2008
- 弦が駒から胴へ失う損失の式J. Woodhouse, Euphonics, euphonics.org/5-1-1-coupling-a-string-to-the-instrument-body/
- ねじりのモード(調和で Q が一定)、チェロの D 線のねじりの QJ. Woodhouse and A. R. Loach, “The torsional behaviour of cello strings,” Acustica/Acta Acustica, vol. 85, pp. 734–740, 1999
- ねじり波と横波の速さの比の目安K. Guettler, “String stiffness,” knutsacoustics.com/files/String-stiffness.pdf
- 駒での結合C. E. Gough, “The theory of string resonances on musical instruments,” Acustica, vol. 49, pp. 124–141, 1981
- 弦の応答の直線と摩擦の特性の交点(Friedlander の作図)、履歴の規則M. E. McIntyre, R. T. Schumacher and J. Woodhouse, “On the oscillations of musical instruments,” J. Acoust. Soc. Am., vol. 74, pp. 1325–1345, 1983
- 摩擦曲線のもとの測定、熱の釣り合いと伝導の核、弓の側の打ち切りJ. H. Smith and J. Woodhouse, “The tribology of rosin,” J. Mech. Phys. Solids, vol. 48, pp. 1633–1681, 2000
- 摩擦曲線の式(定常の滑りへの古典的な当てはめ)J. Woodhouse and P. Galluzzo, “Enhanced Tribological Modelling of Violin Rosin,” Tribology Letters, vol. 73, art. 128, 2025
- 熱の模型、温度と摩擦係数の関係、接触と材料の値、刻みの収束J. Woodhouse, “Bowed string simulation using a thermal friction model,” Acta Acustica united with Acustica, vol. 89, pp. 355–368, 2003
- 周期の揺れの主な原因が、松脂のむらなど外からの不規則さであることM. E. McIntyre, R. T. Schumacher and J. Woodhouse, “Aperiodicity in bowed-string motion,” Acustica, vol. 49, pp. 13–32, 1981
- Schelleng の弓圧の上限、Helmholtz の運動の滑りの割合と駒の力J. Woodhouse, Euphonics, euphonics.org/9-3-1-shellengs-bow-force-limits/
- 駒の模型と当てはめた値、弱音器の扱いと 5 g の計算例、足の位置の平均のアドミタンス、シグネチャモードの足の動きの比J. Woodhouse, Euphonics, euphonics.org/7-5-tonal-adjustment-in-the-violin/、euphonics.org/7-5-1-modelling-the-violin-bridge/
- 足を固定した駒の共振(Reinicke の測定)、シグネチャモードのアドミタンスの山、A0 の現れ方J. Woodhouse, Euphonics, euphonics.org/5-3-signature-modes-and-formants/
- 約 1 g の弱音器の測定B. Elie, F. Gautier and B. David, J. Acoust. Soc. Am., vol. 136, no. 3, pp. 1385–1393, 2014
- モードの和のアドミタンス、モードの重なりJ. Woodhouse, “The acoustics of the violin: a review,” Rep. Prog. Phys., vol. 77, 115901, 2014
- シグネチャモードの周波数(17 挺の平均)、実効的な臨界周波数(14 挺の平均)、帯域の平均の放射、測定の球面の半径G. Bissinger, J. Acoust. Soc. Am., vol. 124, no. 3, pp. 1764–1773, 2008
- 支えなしの減衰と周波数による減り方、B1 の放射、CBR の放射が弱いこと、放射効率の定義、放射する面の面積、モードの数G. Bissinger, J. Acoust. Soc. Am., vol. 132, no. 1, pp. 465–476, 2012
- 構えたときの減衰(Marshall の測定の引用)と周波数による増え方G. Bissinger, Proc. SMAC 2013, pp. 32–37, 2013
- 胴のモードの Q、A0 の和の規則(Weinreich)C. E. Gough, Acoustics Today, vol. 12, no. 2, pp. 22–30, 2016
- モードの平均の間隔の見積り(44 Hz)G. Weinreich, “Directional tone color,” J. Acoust. Soc. Am., vol. 101, no. 4, pp. 2338–2346, 1997
- 楽器の質量の内訳E. V. Jansson, Acoustics for violin and guitar makers, Chapter VII, speech.kth.se/music/acviguit4/part7.pdf
- スラーのない音ごとに弓を返す規則、単音の弦の選び方G. K. Percival, “Physical modelling meets machine learning: performing music with a virtual string ensemble,” PhD thesis, University of Glasgow, 2013
- 音量が弓の速さ ÷ で決まることE. Schoonderwaldt, PhD thesis, KTH, 2009, diva-portal.org/smash/get/diva2:133385/FULLTEXT01.pdf
- ビブラートの平均の速さ(5.9 Hz)M. Mellody and G. H. Wakefield, J. Acoust. Soc. Am., vol. 107, no. 1, pp. 598–611, 2000
- 演奏の規則(Phrase arch・Punctuation・Final ritardando・High loud・Noise)A. Friberg, R. Bresin and J. Sundberg, “Overview of the KTH rule system for musical performance,” Advances in Cognitive Psychology, vol. 2, no. 2–3, pp. 145–161, 2006
- 和音を 2 つの重音に分けて弾く実装M. Demoucron and N. Rasamimanana, “Score based real-time performance with a virtual violin,” Proc. DAFx-09, Como, 2009
- 残響時間C. F. Eyring, “Reverberation time in ‘dead’ rooms,” J. Acoust. Soc. Am., vol. 1, no. 2A, pp. 217–241, 1930
- 残響J.-M. Jot and A. Chaigne, “Digital delay networks for designing artificial reverberators,” AES 90th Convention, Preprint 3030, 1991
- 空気の吸収ISO 9613-1
このツールで決めたこと
次の値と方法は、文献に基づかず、このツールで選んだものです。
- E 線の外径(0.25 mm)
- 低い周波数で増える弦の損失(剛な台の上での基本モードの Q を約 900 に)
- 押さえた指の損失(第 1 モードで 。 = 0.2 kg/s の弦の端に約 50 kg/s の抵抗を置いた値)
- 巻線の弦のねじりの値(速さの比 5.5、インピーダンスの比 2.5、Q 20)
- 弦の長さが変わるときに、モードの振幅をそのまま引き継ぐ扱い
- 熱の模型の伝導の裾の近似(指数関数 17 個)、弓の毛の側の履歴の忘れ方、弓が離れている間の接触の大きさ(0.05 N のとき)
- 松脂のむらの相関の長さ(0.5 mm)と標準の大きさ(3 %)
- 1 標本を分ける刻み(滑りの間を 24 刻み以上、最大 10 刻み)
- 押さえた E 線の弓圧の下限の目安(0.38 mN)
- 弦の中ほどの全振幅の目安(振れの包絡を放物線とした近似)
- 駒: 揺れの共振 3 kHz(当てはめの 2.9 kHz と Reinicke の約 3 kHz から)、駒そのものの減衰比 1 %、上端の曲線の半径 42 mm と弦の向きの傾き
- 弱音器の質量: ゴム 1 g(約 1 g の実測から)、金属 5 g(Woodhouse の計算例から)
- シグネチャモードのうち A1 を入れないこと
- 多数のモードの範囲(760 Hz〜10 kHz)、平均の間隔(55 Hz)と間隔のばらつき(0.6〜1.4 倍)
- 胴の減衰比の係数(支えなし 0.015、構えたとき 500 Hz で 0.03)
- 放射効率の傾き(指数 0.9)、大きさの補正(0.6〜3.9 kHz の平均を Bissinger の図に合わせる 0.94 倍)、振動する殻の質量(0.21 kg)
- 曲の弓: と弓の速さの範囲(下の表)、 の基準(mf で 0.33 m/s ÷ 0.1)、E 線と G 線の の倍率 1.3、弓圧を Schelleng の上限の 0.385 倍にすること(試聴で決めた)、重音・和音の下の弦の を 0.1 以上にすること
- ひと弾きの形(速さを上げ下げする時間、弓を返す 8 ms・10 ms、弓を離すときに弓圧を抜く 40 ms、弓圧を 0.2 倍より下げないこと、弓を当てる 15 ms・20 ms 前、弦の移り 12 ms)と、ひと弾きごとのばらつき
- ゆっくりした揺らぎの時定数(0.05・0.3・1.5 s)と大きさ
- 二重の滑りの見張り: 判定(第 2 倍音が基音より強い)、弓圧を上げる上限(D・G 線で 2 倍)、摩擦曲線へ移るまでの時間(D・G 線 0.25 s、E・A 線 40 ms)、摩擦曲線での弓圧(上限の 0.27 倍)
- 乱れの見張り: 判定(1 周期前との差の比 0.12)、ならす時定数(15 ms)、弓圧を下げる下限(0.75 倍)と時定数(下げる 50 ms、戻す 0.3 s)
- 弓の使い方: 弓を離すところ(休み・3 音以上の和音の前・0.3 s 以上のひと弾きで終わる楽句の終わり)、離す時間(音の 1/4、0.04〜0.1 s)、和音を下げ弓で元から 6 cm で始めること、毛の両端の余裕(3 cm)、弓の速さの倍率の範囲(0.7〜1.15)
- 手で弾くときの毛の長さ(0.65 m)、加速の時間(0.08 s)、返すときの弓圧の弱め方
- 音の高さを移す時間(スラー 30 ms、弓を返すとき 10 ms、トリル 6 ms)
- ビブラートの掛け方(遅れ、広げ方、終わりの弱め方、強弱による幅、音ごとのばらつき)と標準の幅(50 セント)
- 楽譜の解釈: 楽句の長さ、弧の形と大きさ、延びと遅くする割合、ふくらみ、High loud の大きさ、出だしのばらつき(6 ms)
- 強弱の記号の値(ppp −16、pp −12、p −7、mp −3、mf 0、f +5、ff +9、fff +12、fz・sf・sfz +6 dB)と、次の記号がない松葉の幅(±4 dB)
- 和音の分け方(下の 2 音から上の 2 音へ、0.11 s)、分散和音の形、トリルの形、G3 より低い音を 1 オクターブ上げること
- 曲の標準のテンポと強弱の予定(下の表)
- 部屋の寸法と吸音率
| 弦 | (押さえた音) | (開放弦) | 弓の速さ |
|---|---|---|---|
| E 線 | 0.12〜0.135 | 0.12〜0.13 | 0.22〜0.5 m/s |
| A 線 | 0.07〜0.1 | 0.07〜0.1 | 0.22〜0.5 m/s |
| D 線 | 0.09〜0.11 | 0.1〜0.115 | 0.22〜0.5 m/s |
| G 線 | 0.1〜0.13 | 0.115〜0.13 | 0.22〜0.5 m/s(開放弦は 0.35 m/s まで) |
の範囲は、揺らぎ・松脂のむら・弓の返しを含めて走査し、どの弓の速さでも乱れにくかった範囲です。
| 曲 | 標準のテンポ | 楽句 | 強弱の予定 |
|---|---|---|---|
| シャコンヌ BWV 1004 | ♩ = 60(ニ長調の節は 54) | 4 小節 | 節ごとの折れ線(−7〜+6 dB) |
| アルマンド BWV 1004 | ♩ = 60 | 2 小節 | 0 dB |
| クーラント BWV 1004 | ♩ = 96 | 4 小節 | +1 dB |
| サラバンド BWV 1004 | ♩ = 54 | 4 小節 | −1 dB |
| ジーグ BWV 1004 | ♩ = 99 | 2 小節 | +1 dB |
| 前奏曲 BWV 1006 | ♩ = 112 | 4 小節 | +2 dB |
| アダージョ BWV 1001 | ♪ = 48 | 2 小節 | 0 dB |
| グラーヴェ(エクルズ) | ♪ = 69 | 2 小節 | 楽譜の記号 |
| アダージョ(エクルズ) | 𝅗𝅥 = 42 | 2 小節 | 楽譜の記号 |
楽譜の出典
パルティータ 第 2 番 ニ短調 BWV 1004 より 5 楽章 J. S. バッハ「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ」
音符は、Mutopia Project の楽譜(アルマンド・クーラント・サラバンド・ジーグ・シャコンヌ)の LilyPond のファイルから読みました。反復は演奏順に展開し、装飾音は除いています。
- 入力: アルマンド・クーラント・シャコンヌは Hajo Dezelski。サラバンド・ジーグは Benjamin D. Esham
- 底本: Bach-Gesellschaft Edition 1879 Band 27.1
- 楽譜の番号: Mutopia-2010/02/03-1423・Mutopia-2008/05/18-1424・Mutopia-2008/10/29-1427・Mutopia-2008/05/28-1428・Mutopia-2019/05/30-1426
- 標準のテンポ:
- アルマンド: ♩ = 60
- クーラント: ♩ = 96
- サラバンド: ♩ = 54
- ジーグ: ♩ = 99
- シャコンヌ: ♩ = 60(ニ長調の節は 54)
パルティータ 第 3 番 ホ長調 BWV 1006 より 前奏曲 J. S. バッハ
音符は、Mutopia Project の楽譜の LilyPond のファイルから読みました。
- 入力: Hajo Dezelski
- 底本: Bach-Gesellschaft Edition 1879 Band 27.1
- 楽譜の番号: Mutopia-2008/07/13-1469
- 標準のテンポ: ♩ = 112
ソナタ 第 1 番 ト短調 BWV 1001 より アダージョ J. S. バッハ
音符は、Mutopia Project の楽譜の LilyPond のファイルから読みました。
- 入力: Hajo Dezelski
- 底本: Bach-Gesellschaft Edition 1879 Band 27.1
- 楽譜の番号: Mutopia-2008/06/01-1429
- 標準のテンポ: ♪ = 48
バッハの 7 曲の楽譜のライセンスは クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承 3.0(CC BY-SA 3.0)で、元の LilyPond のファイルと、そこから作った音符のデータ(src/tools/violin/scores の bwv1001-1・bwv1004-1〜5・bwv1006-1)も同じライセンスで公開します。
原典に強弱の記号はありません。強弱の目安(シャコンヌは節ごとの強弱の予定)とテンポは、このツールで決めた仮定です。
ソナタ ト短調 より グラーヴェ・アダージョ H. エクルズ(J. Salmon によるヴァイオリンとピアノの編曲、1914 年)
音符は、Mutopia Project の楽譜の LilyPond のファイルから、ヴァイオリンの声部だけを読みました(ピアノの伴奏は鳴らしません)。強弱の記号と松葉は楽譜のものを使います。
- 入力: Benjamin Crowell
- 楽譜の番号: Mutopia-2015/09/01-540
- ライセンス: パブリックドメイン
- 標準のテンポ:
- グラーヴェ: ♪ = 69
- アダージョ: 𝅗𝅥 = 42
弾く弦、弓の向き、重音と和音の弾き方(3 音以上は下の 2 音から上の 2 音へ分けて弾く)、トリルの形は、このツールが楽譜から決めています。