極と零点
z 平面に極と零点を置いて動かし、デジタルフィルタの周波数特性(振幅・位相・群遅延)、インパルス応答、伝達関数の係数と双2次の縦続を求めます。周波数特性の上の点から極と零点へ引いた線の長さと角度で、振幅と位相が決まる様子を見られます。ホワイトノイズや鋸歯状波に掛けた音も聞けます。
よく使う配置
原点からの距離。極は 1 以上で不安定になる
実軸の正の向きからの角度。180° が fs/2 にあたる。0° と 180° は実軸の上の 1 個、ほかは共役の対
H(z) に掛ける定数。1 なら振幅は線の長さの積の比そのもの
周波数の目盛りと共振の周波数の基準。試聴は再生装置のサンプリング周波数で鳴らす
入力の音の大きさ(0 dB = フルスケール)。フィルタは最大の利得を 0 dB にそろえて掛ける
鋸歯状波の基本周波数
- 最大の利得 max |H|
- 最大の周波数
- 安定性
- 次数
- 直流の利得 |H(1)|
- fs/2 の利得 |H(−1)|
- 極の最大の半径
- 利得 k
| 点 | 半径 r | 角度 θ | 周波数 f | Q | 時定数 τ |
|---|
線形なら単位円の角度と同じ並び
周波数特性のグラフの縦軸の下端
| 根 | 位置 | 長さ d | 角度 φ |
|---|
インパルス応答のグラフの 8 div に入れるサンプル数
| i | bi | ai |
|---|
極が単位円から遠い段から順に並べる。利得 k は 1 段目の分子に掛けた
| i | b0i | b1i | b2i | a1i | a2i |
|---|
動作原理と式
極と零点
伝達関数 の分子が 0 になる を零点 、分母が 0 になる を極 と呼びます。
係数が実数なら、実軸の上にない極と零点は複素共役の対で現れます。
振幅と位相
周波数特性は、 を単位円の上の点 に置いた です[1]。 です。
から各零点・各極へ線を引き、次のように置きます[2]。
- 線の長さ
- 実軸の正の向きからの線の角度
- 振幅: 零点までの長さの積を、極までの長さの積で割ったもの
- 位相: 零点の角度の和から、極の角度の和を引いたもの
極が単位円に近いと、その角度の近くの周波数で極までの線が短くなり、振幅が大きくなります。これが共振です。単位円の上の零点は、その周波数を消します。
原点の根
因果的なフィルタは の多項式で書きます。そのため、極と零点の個数が違うときは、少ない側の根を原点に足したのと同じになります[2]。
原点の根は振幅を変えず、位相を ずつずらします。 平面には破線で描いています。
安定と共振の Q
すべての極が単位円の内側にあれば安定です。
極 を とアナログの極に移すと、共振の と減衰の時定数 が分かります。
双2次の縦続
高い次数のフィルタは、極の対と近い零点の対を組んだ双2次の段に分け、縦続につなぐと係数の丸めに強くなります[1]。
段は、単位円に近い極から順に、いちばん近い零点と組みます[3]。
試聴
試聴では、点を動かしている間も音が途切れないようにします。点ごとの 1 次・2 次の因子の係数を、時定数 10 ms で新しい値へ近づけます。
安定な 2 次の分母 の係数の範囲は、次の三角形で、凸です。そのため、安定な係数の間を直線で動かしても、途中で不安定になりません。
出典
- 有理伝達関数の周波数特性と縦続形A. V. Oppenheim, R. W. Schafer, Discrete-Time Signal Processing, 3rd ed., Pearson, 2010, 5.3 節・6.3 節
- 振幅・位相を極と零点までの線の長さと角度で求める方法、原点に足す根、群遅延J. O. Smith III, Introduction to Digital Filters with Audio Applications の Graphical Computation of Amplitude Response from Poles and Zeros・Graphical Phase Response Calculation・Phase and Group Delay
- 双2次の段への極と零点の組み方(倣ったもの)SciPy, scipy.signal.zpk2sos(pairing='nearest')
このツールで決めたこと
- と時定数を、 でアナログの 2 次系の極に移して求める見方
- 試聴の係数の切り替え方